日曜日, 5月 29, 2022
Home Interviews 市野勝磯: 伝統から現代美術への一歩を踏み出す

市野勝磯: 伝統から現代美術への一歩を踏み出す

“丹波焼ならではの素朴で自然な土を活かしたい”

市野勝磯

兵庫県にある「日本六古窯」の一つである丹波焼を作り続けている市野家の7代目、市野勝磯さん。今から約850年前の平安時代末期に発祥した陶器です。

1926年、日本の哲学者・柳宗悦とその仲間たちによって「民藝」と呼ばれる日本の民芸運動が始まりました。これまで美術史からほとんど無視されてきた日本の日常的な美術品や、無名の職人が作った陶器や織物、漆器などの工芸品を世界に紹介しようというもので、柳宗悦は「民藝」と呼ばれた。柳は300点の丹波焼を収集し、その美しさを伝える書物を執筆しました。柳宗悦の努力により、90年前、食器としての丹波焼の歴史がよみがえりました。丹波焼の技術を現代美術として取り入れた新しいスタイルの焼き物を発表する市野勝磯の取り組みは、柳宗悦の「民藝」運動を継続させるものとなるでしょう。

丹波焼の歴史-丹波焼職人の一族
粘土でアートを作る
丹波焼を通じた表現
シンプルな食器から現代アートまで
市野勝磯の作品を購入する場所
歴史-丹波焼職人の一族

炭酸化した「みずさし」 by 市野勝磯
丹波焼の長い歴史とは?

丹波焼の歴史は約850年前にさかのぼり、その起源は平安時代末期にまでさかのぼります。谷間の山間に窯を作り、実用的な食器を作っていました。常に時代が求める焼き物を作りながら、新しいことに挑戦し続けながら、家族に受け継がれてきました。この貴重な歴史を感じます。この時代にしか作れない、この時代にしか作れない、自分にしか作れない、自分だけの焼き物を作れるように努力しています。

20代で陶芸の修行を始める前は何をしていたのですか?

先生に洋画を習っていました。彫刻も1年間勉強していました。私が通っていた大学は美術学校ではなく、関西学院大学で経済学を専攻していました。

丹波焼の伝統的な職人の家系に生まれ、ご先祖様の跡を継いで丹波焼の作家になられたわけですが、なぜこの道を選ばれたのですか?

子供の頃は、焼き物はいつも身の回りにあったもので、あまり興味がありませんでした。しかし、20代の頃、東京で陶器を使った作品を作っている作家さんに師事しました。それに触発されて、故郷の丹波の窯で現代の焼き物を作ってみようと思いました。以来、制作を続けています。

粘土を使った作品制作
丹波焼の特徴は?

素朴な風合いの素朴な土が特徴です。丹波焼は、時代の流れとともに制約が少なく、自由に形を変えていきました。歴史的な丹波焼には、作られた時代のニーズが反映されています。丹波焼の特徴は、時代の流れを反映した焼き物であることです。

炭酸八角の「水無月」(茶道用の水入れ)市野勝磯作
丹波焼はなぜ焼き物の生産で栄えたのか?丹波焼の粘土は他の粘土とどう違うのでしょうか?

この辺りは焼き物に適した粘土が豊富にあったからだと思います。鉄分の多い山間部の土です。

いつも使っている粘土はどんな感じですか?

私の作品に使っている粘土は、コップやお椀の仕上げにも使えるので、表面がとても滑らかで肌触りが良いです。

丹波焼を通しての表現
丹波焼で表現したいこと、丹波焼だからこそ表現できることを教えてください。

存在感のある、形にこだわった焼き物を作りたいです。丹波焼ならではの素朴で自然な土を活かしたいですね。もともと丹波は重厚感があり、丈夫で頑丈な焼き物という特徴がありました。丹波の土に白土を塗っています(鉄分の多い土はそのまま焼くと赤茶けた色になってしまいます)。

長年続けているのは、炭焼きという炭を使った焼き方にこだわっています。素朴で軽やかな感じがします。一言では言い表せませんが、ジャズの軽快な音にも負けない丹波焼を目指しています。

海外の美術愛好家に丹波焼を紹介する場合、国内のファンに紹介する場合と比べて、どのような点に力を入れていますか?

自然で素朴な土の丹波焼という日本のスタイルにこだわりたいですね。実用性よりも、丹波焼そのものの存在感を大切にして、際立たせたいですね。

食器や花器であれば、食べ物を載せた食器や、花を入れた花器を見せることで、焼き物の存在感をアピールしていきたいと思います。

しかし、形を重視した陶芸の場合(もちろん花器や茶道具も含まれます)は、作家の制作意図やアイデアが重要だと思います。時代の変化にも耐えうる、タイムレスな力が必要だと思います。

今回初めて海外に進出しました。これからは、このような陶器作りに力を入れていきたいと思っています。

丹波焼を買った人にはどう感じてもらいたいですか?

土のぬくもりを感じて、いつまでもそばに置いておきたいと思ってもらいたいですね。

市野勝磯氏による土のイメージ
シンプルな食器から現代アートまで
これまで日本では貴重な伝統工芸品とされてきた丹波焼。現代アートの存在によって、やきものの歴史はどのように変化していくのでしょうか。また、新たな挑戦とは何でしょうか。

実用的な用途ではなく、海外では家を飾るために使われている焼き物が、新たな需要を生み出しています。また、作品の扱い方も変わってきますし、技術やデザインも洗練されてくると思います。丹波のギャラリーにも丹波の作品が増えてくると思いますし、また違ったお客さんが来てくれると思います。

他の作家から影響を受けたことや、自分のモットーはありますか?

東京で師事した板橋弘美先生に影響を受けています。

陶芸の勉強だけでなく、美術展にも足を運んでインスピレーションを得ています。自分の心に忠実な焼き物を目指しています。完成した作品を分析してアイデアを得ることが多いです。改良点を探して、次の作品をイメージしています。

今後の予定はありますか?

丹波焼を海外に広めていきたいですね。海外の展示会で作品を発表する機会があればいいですね。

市野勝磯さんの作品を購入できる場所

TRiCERAでは、市野勝磯のユニークな作品を数多く展示しています。他の日本の若手アーティストの作品に興味がある方は、コンテンポラリーアートのページをご覧ください。

Shinzo Okuokahttps://www.tricera.net/
1992年東京都出身。大学でインド哲学を学んだ後出版社に勤務し、アート雑誌と神社専門誌の副編集長として雑誌及び書籍の企画・編集に携わる。2019年にスタートアップ企業である株式会社TRiCERAに参加、日本初の現代アート専門の越境ECの開発及びアーティストのマネジメント、自社オウンドメディアの立ち上げを担当する。特技は速筆で、雑誌時代には1ヶ月で約150ページを1人で取材・執筆した。

Most Popular

You Might Like

仲介者としてのアーティスト

刺繍の手法で制作するAsami Asamaは、自分のことを「器」と表現しています。Asami Asamaによると、インスピレーションに忠実に作品を制作することが大切だという。自身をシャーマニズム的なスタイルと称しているからこそ、作品は純粋さを保っているのだそうです。 Asami Asamaの作品は刺繍を中心に制作されていますが、これは最初から習っていたものなのですか? -いえ、最初は一人で絵を描くところから始めました。元々はイラストレーターの仕事をしていたのですが、自分のオリジナルの表現で作品を作りたいと思ったのが、クライアントの仕事をしていたのではなく、アートの仕事にシフトした理由です。 子供の病気がきっかけで刺繍に転向しました。その間、作りたいと思っていても何も作っていませんでした。しかし、絵を描く時間と場所がなかなか取れない。アーティストとしての生活とプライベートを両立できるのは、刺繍だけだと思いました。 Honkadori Bacchus, 33×33cm 刺繍は生活の中で気軽に取り入れられる芸術表現だったんですね。刺繍も独学ですか? -そうですね、独学なので、ワークショップを頼まれても人には教えられないんですよ。自分なりのルールや方法はありますが、特に決まっているわけではありません。作品の作り方は自分の生活の中で出会ってきたものなので、ちゃんと刺繍を習っている人とは違うかもしれません。それに、私は表現を大切にしているので、クラフトやハンドクラフトにはなりたくないんです。 刺繍という手法を使った作品」である以上、アーティストとしての視点は必須です。それについてはどう思いますか? -私の作品はどちらかというとひらめき系です。シャーマニックというと変かもしれませんが、自分の中でアイデアが「降りてくる」という感じです。頭の中にモチーフが降りてきて、それをどうやって作品としてアウトプットしていくか。それが僕の創作スタイルです。 Enlightenment, 33×33cm つまり、アーティストがインスピレーションと作品の間に立っているような気がするんですよね。 ーーそれはあくまでも僕の場合ですが、だからこそ精神状態が大事なんですよね。作家の精神状態とか、目に見えないものが作品に繋がっていると思うんです。だから、自分の状態が不安定な時は、必ず作品に反映される気がするので、絶対に作品を作らないようにしています。朝は「お清めの儀式」をすることが多いのですが、純粋なインスピレーションを得ること、どれだけ純粋な作品になるかが大事だと思っています。 昔は「アーティストというよりシャーマンみたい」と言われることにコンプレックスを持っていましたが、今はそんなことは気にならなくなり、頭で考えている時よりもずっと良い作品が作れるようになり、アイデンティティのようなものすら感じています。 私の作品の流れは、「考える」→「スケッチする」→「キャンバスに刺繍する」です。いつも夜中や明け方に新しいインスピレーションやアイデアを得て、それを忘れないようにすぐにスケッチしています。 Honkadori Giuliano, 33×33cm 最後になりましたが、「The」の中で何か変えたいことはありますか? -いや、特にないですね、自分の作品には原型があって、それをどうやってキャッチして仕事に移せるかが問題なので。だからこそ、心と体には常に気をつけています。肉体的にも精神的にも体調を崩していたら、良い作品は作れないと思うんです。良い「器」になることがとても大切なんです。

現代アメリカのアートの流れを覗く-アメリカン・アーティスト特集-

アメリカのアートもしくはアーティストと言えば、何、また誰が思い浮かぶだろうか?8月はアメリカン・アーティスト鑑賞月だそうで、新しくアメリカ出身/拠点のアーティストを発見するのには持ってこいのタイミングだ。 第二次世界大戦後、それまで地球規模での影響力を誇ったヨーロッパの国々は力を保持できず、代わりにアメリカが台頭した。これは政治や金融だけでなく、芸術においても同様であり、アメリカ文化が以前にも増して宣伝され、輸出されるようになった。特に、ポップやミニマリズムなどの芸術運動は、現代美術の行方に多大な影響を与えた。 ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、ジャン・ミッシェル・バスキア、ドナルド・ジャッド、フランク・ステラ......と、その名前を連ねるのはいとも容易い。私たちが現在知る形のアートを楽しめるのも彼らのおかげである。アメリカの政治的なイメージは、アメリカ人でない私たちにとっては決して崇高なものではないかも知れないし、そして現大統領が懐かしむほどにグレートではないかも知れない。 しかし、幸いなことに、芸術の創造性を楽しむのに世情は関係ない。我々は、希望と夢の国から届けられる輝かしいアートと共に、幸せな現実逃避の航海へ漕ぎ出すとしよう。 Brian Schorn A.C.D. Seth King Lawrence Lee Edward Burden Cash - Cooper Sandra Mack-Valencia Carl Goss Clint Imboden

スペシャルイベント「さめほし クリスマス会」開催のご案内

スペシャルイベント|さめほし クリスマス会 開催   この度、TRiCERA MUSEUM では、12/18(土) – 12/24(金)の会期にて、 スペシャルイベント「さめほし クリスマス会」を開催致します。 さめほしは1997年京都府出身、2020年武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒し、現在は東京を拠点に活動。 これまでは「One Scene」(新宿眼科画廊/2018/東京)、「ショートケーキのうみで目が覚めたら」(新宿眼科画廊/2019/東京)といった個展、さらに今年度のアートフェア東京2021に参加するなど活動を行なってきました。 今回の展示では、新作ペインティングに加え、今夏の個展「Entropy(エントロピー)」(TRiCERA MUSEUM/2021/東京)で発表した、さめほし初の立体作品を再構成し、特別な仕様を加えた刺繍作品や、エディションワークを会場にて公開いたします。 「かわいいものは元の形を失っても尚かわいい」 崩壊と生成をキーワードにペインティングを発表するさめほし本年の活動のハイライトを、 クリスマスの装いとともにご堪能ください。 ————————– 🎄クリスマスプレゼントキャンペーン スペシャルイベント「さめほしクリスマス会」の開催を記念し、本イベントにて クリスマスプレゼントが当たる!キャンペーンを開催します!🎂🎄 【クリスマスプレゼントキャンペーン第1弾】 🌟抽選で10名様にプレゼント🌟 TRiCERA 公式アカウント フォロー+DMで応募 上記ご対象者の方から抽選で10名様に【さめほしオリジナル冊子】プレゼント 応募期間:12/13(月)〜12/23(木)まで 12/24当選発表 【クリスマスプレゼントキャンペーン第2弾】 🌟抽選3名様にプレゼント🌟 対象作品購入者のなから抽選で1名様にさめほしオリジナルドローイングプレゼント 12/19(日)15:00〜よりライブイベントにて描き下ろされたオリジナルドローイングが抽選で3名様に当たります。 - 対象作品 - Entropy  - collected edition Entropy - embroidery edition 流星群 ほしの体温 肉 【クリスマスプレゼントキャンペーン第3弾】 🌟抽選5名様にプレゼント🌟 対象作品購入者のなから抽選で5名様に 版画作品「クリスマスケーキ」(フレーム付)をプレゼント。 - 対象作品 - Entropy  -...

アーティストは都市を実験しています。

大分県南部の別府駅から歩いて行ける距離にある「別府駅前市場」にアートスペースがあります。名前は「GENJITSU」。県内在住のアーティスト畑 直幸さんが運営する実験的なアートスペースです。 "GENJITSU "は、元々大分県に住んでいた3人のアーティストからなるアートグループです。メンバーはHiroaki Azuma、Takanori Suzuki、畑直幸の3人だったが、他の2人は転居を機に脱退していた。畑は「GENJITSU」のメンバー変更を受けて、アートグループからアートスペースへと道を変え、新たなスタートを切ることを決意しました。 "自分たちの作品を発表し、自分たちを高めていくことが何よりも大切です。他の国のアーティストを呼んで、試してみたいと思います。また、立地も重要で、商店街の立地が適していると思います。例えば、通りすがりの人や向かいのお店に見られる。彼らは不思議に思うし、そこから生まれるコミュニケーションを大切にしたい。私たちのための実験、街のための実験だと思っています。" 今では唯一のメンバーとなった畑はそう言う。彼の目的の一つは、アートを日常生活のような広い枠に落とし込むことだ。"GENJITSU "はアート空間であると同時に、ムーブメントでもある。 Instagram: https://www.instagram.com/genjitsu_art/?hl=j

デジタルはリアルの対義語か?平田尚也が目指す新しい彫刻の「場所」をめぐって。

ネット上から収集した素材を、仮想空間上にアッサンブラージュして制作される平田尚也の作品は、彼曰く「彫刻」として成立している。「あくまでもトラディショナルな彫刻をやっている」という彼の、厚さも重さもない、空間上に固定されることが存在要件でもあった彫刻をアップデートするその方法論や作品について話してもらった。 平田さんは仮想空間における彫刻作品を制作していますね。厚みや重さの無い、従来の空間的な尺度が無い彫刻作品です。ご自身の活動は、あくまで「彫刻家」という認識なんですよね。 -意識的なことで言えば、自分のことは彫刻家であり美術家と呼んでいます。主眼を置いているのは”形”を追求し彫刻史の現代的な見解を考察することです。実際にやっていることは、少なくとも私の中では、これまで彫刻をやって来た人たちと変わらないと思っています。形はつくっているけれど、でもそのアプローチが仮想空間の世界であるという点しか違いがない。 預言者 33 × 27.5cm 彫刻というと物質や空間の制限を受けるジャンルと連想しますが、そのフィルターは邪魔にならなかったのですか? -現在のスタイルのように映像でアウトプットする理由は、正直、最初は定まっていなかった。定まっていない時は、大方いつも情報量の不足から来る。色々と本を読んだり、あとは教わった先生が「彫刻とは時間と空間を伴うもの」と仰っていて。その時間化と空間化を彫刻の要素とするならば、私のやっていることは彫刻の条件を満たしているなと。現在の作品のアウトプットは映像や平面としてやっているのですが、その映像という出力の仕方が、自身の彫刻表現を考える時には合っていると思いますね。 ですが、その仮想空間における彫刻というアイディアはどこから出たんでしょうか。 -デジタルでやり始めたのは、だいたい学部4年ごろから。当時のちょっとグレた先輩が3DCGソフトで遊んでいるのを見かけ、すぐさま「これだ」と思いました。当時の自分が抱えていたものを解決できると思ったし、何よりこれは彫刻がつくれると直感しました。 でも、実はそれに先行して実写映像でやっていた時期があるんですよ。通っていた学校では3年生になると自由な制作期間が与えられるんですが、その時に困ったのが素材の問題で。つまり素材を入手する資金がなかった。彫刻はお金がかかるし、その問題に直面した時、自分が扱いたい素材はほとんど除外されてしまったんです。 DINER 33 × 36.6cm その打開策が、映像だった? -そう、まさに。少しうろ覚えですが、当時影響を受けたマシュー・バーニーが自分の映像作品を彫刻と呼んでいて「なるほど」と。つまり彫刻性さえ保てればアウトプットに制限することはなかったんです。それで試してはみたんですが、しかしクオリティが低かった。失望しましたね、自分に。同時にこれではダメだと思った。もともと海外のアーティストに憧れていたし、自分もそのレベルの作品をつくっていきたかったので。そうこうしている中で出会ったのが件の3DCGソフトだったので、まさに「これだ」でしたね。 平田さんの作品はオンライン上から素材集め、つまりデジタルな既製品をコラージュ的に構成使用して制作されますね。その点は、ご自身の何の意図と結びついていますか。 -意図というより、最初は方法の問題だったんですよ。自分としては従来の彫刻家とやっていることは変わらないつもりでいますが、でもデジタルで彫刻を制作すると、あくまで見え方や見せ方の話ですが、既存の映画やゲームとの線引きが難しくなってくる。つまり、どうやって現代アートの文脈上で作品を成立させていくかが課題でした。 Ouija #2 (The Grantham Tomb) 118.9 × W 84.1cm しかも彫刻作品として。 -そう、その方法が既製品を寄せ集める、つまりアッサンブラージュだった。実際の場合、使用した素材は物質として元の場所からなくなってしまうけれど、でもデジタルの場合は基本コピーだから無くならない。使用した素材が、この世界のどこかでは残っている。それが面白い。私の作品は、つまり世界のどこかで、いつ誰が作成したのか分からないものの寄せ集めなんですよ。ある意味で、それは現代の情報の結晶のように思えるんです。そこに気がついてからはコンテキストの構築は難しくなくなりましたね。 平田さんがデジタルにリアリティを感じられるのは世代的に、ネットの成長が並走的だったこともあるでしょうか。 -確かに私にとっては石とか木材の方が距離があるかもしれない。自分自身を含めて私の世代は、ネットと同時に育ってきた。ある時代の人たちにとっては自然や都市がそうであったように。生まれた頃からテレビゲームがあるし、インターネットがあって、オンラインの世界が構築されている世代だった。だからバーチャルには親しみが持てるし、それは並列的な存在として扱える。鉄や石と同じ列で見ることが出来る素材なんです。 Ouija #5 (Penelope) 118.9 × 84.1cm その素材が存在する場所が、つまり鉄などとは違うだけで。 -まさにその通り。私が扱う素材は、木材などとは違う場所、違う次元に存在している。情報として世界中のネットという場所に所在している。その点だけなんです。作品へのアプローチやそれ自体の成り立ちは、あくまで伝統に沿っているつもりですが、でも仮想空間やその他デジタルな用語や方法はけっこう時事的だし、そこだけ切り取られてしまう傾向にはありますけど。 実際の空間と仮想空間では、存在する情報が違いますよね。重さや手触りなどがそうですが、その点から見た場合の平田さんの彫刻作品のアップデートはどこにありますか。 -アップデートかどうかはともかく、私の作品には厚みが全くない。私の彫刻は内側が虚無なんですよ。これは今までにはあり得なかったこと。厚みを伴わない彫刻なんて無かった。その分というか、彫刻にとって重要なポイントである表面性にフォーカスする必要もありますが、存在の仕方として新しい局面に立つことは出来ると思うし、そうしたいと思いますね。私の作品の本体は仮想空間にあって、展示されているアウトプットされた平面や映像はそのアバターであり、プラトン的に言えばイデアの投影。複数要素を抑えた上で、形をつくる人として何が追求できるかが、つまり今後の課題になるでしょうね。 アーティストページはこちらから:https://www.tricera.net/artist/8100587

Don't Miss

3分で学ぶSzabó Eszterの魅力

必見アーティストの魅力をギュッと3分でお届け   日常にリズムを与える現代アーティスト「 サボー・エステル」の魅力をクイックにお届け。   現在TRiCERA ARTでは、世界126カ国以上から、4,000人を超えるアーティストと約52,000点のアート作品を掲載中です。その中から、今見逃せないアーティストをキュレーターがご紹介いたします。     作家の特徴   日常が思い出になる瞬間を描き起こす ハンガリー・ブダペスト出身 美術大学を卒業後、ブダペストで壁画修復などに携わる 流れゆく瞬間の特別さ、ユニークさを鮮やかに表現           Ms November W 70.00cm x H 50.00cm x D 2.00cm #アクリル画 ¥34,500 +税 (税込¥37,950)   作品を見る   作品のユニークさ 日常をフラットかつ幾何学的に切り取る 身の回りにある風景を一つのシーンとして捉える 物事の関係性、背景などを色彩や形のパターンに置き換えて構成 独特な色彩とコントラストで普遍的な一時を鮮やかに彩る   Drive me baby! W 60.00cm x H 70.00cm x D 2.00cm #アクリル画 ¥33,400 +税 (税込¥36,740)   作品を見る   キュレーターコメント   明るさの奥に感じるノスタルジー ポップでハツラツとした色使いの一方で、ノスタルジアも感じさせる雰囲気 豊かな彩色表現とフラットな画面のバランス 目の前にある日常や光景に、スポットライトを当て愛着を感じさせる   Celestial...

FALSE SPACES:FALSE SPACESとは何かを問う

TOKAS Project Vol.2 "FALSE SPACES" 東京芸術劇場本郷にて 東京を代表するアートセンターの一つであるTOKAS本郷では、展覧会を開催しています。 "FALSE SPACES" "FALSE SPACES "は、TOKAS Project Vol.2で企画された。 関係者によると、2018年から始まったTOKAS Projectは番組として 思索的に芸術や社会などに光を当てることを目的とした 多文化の視点からのテーマを、国際的な活動との連携を図りながら、世界に向けて発信していきます。 アーティスト、キュレーター、アートセンター、文化団体。 TOKAS「FALSE SPACES」では、ホンとコラボ。 香港を拠点に活動するインディペンデント・キュレーターのIP Yuk-Yiu氏と香港芸術センター(HKAC)が共同で開催する展覧会。 本展では、主に日本と香港のメディアアートに焦点を当てています。 をベースにしたアーティストたちと キュレーターIP Yuk-Yiuとキュレーターチームの共同キュレーションにより 本展では、日本人アーティストのITO Ryusuke, TSUDAの3名が展示されます。 Michiko, NAGATA Kosuke、香港からの3人のアーティストNG Tsz-Kwan, Stella SO そして WAREです。 日本と香港の現代アートシーンにおけるメディアアートの鑑賞が「FALSE...

「家族の愛」START ARTIST vol.8 ~ Yuu Minamimura

TRiCERA発のオークションイベント「START」第一弾の出展作家の"なぜSTARTに出展したか"を主軸にしたインタビュー、ならびに新作の紹介を行います。 オークションイベント「START」とは 2021年2月に行われた「START」。アートに携わる様々な人たちを「セレクター」としてゲストに招き、それぞれの視点からアーティストを選び、そしてその魅力を伝える言葉と共に、その作品をオークション形式で販売いたしました。「アートをこれから始める」という方にも分かりやすい設計を行い、またオークションがはじめての方、オンラインではじめてアートを買う方など、様々なひとたちの「スタート」になるような企画となっております。 作家紹介 南村 遊 (Yuu Minamimura) 「人は何に向かっているのか」をベースコンセプトに、石や金属、粘土などを素材にして立体作品を制作している。 主なグループ展には「ART FORMOSA」(Songshan Cultural and Creative Park (Art Ile), 台北, グループ展, 2017)、 「ART CANTON」( Guangzhou Liuhua Exhibition & Trade Center (Art...

水平線を引き直す

米蒸千穂は、視界に霞がかったようなイメージを描く日本画家である。 彼女のこの作風は、ホワイトアウトを体験したことに由来しており、 当時の体験について彼女は以下のように述べる。 ”1メートル先が見えず、見えるものすべてが真っ白で、方向感覚を失ったような気がしました。自分がまっすぐ立っているのかどうかもわからない。まるで宇宙空間に放り出されたような感覚です。” 実際には重力があり、上下は認識ができるはずだが、視覚情報による空間把握が、ホワイトアウトによって混乱し方向感覚が欠損することで、 真っ白な空間の中に自身が浮かんでいるような状態、もしくはミルク色の海に落ちたような感覚が彼女を襲ったのだろう。それは、自身の生命に関わる恐怖体験であったとともに、認識不可能で無限に拡張する空間、上下も左右もなくただ漠として広がり続ける空間という概念の体験でもあったはずである。この体験は、彼女にとって世界のさまざまな境界を曖昧にさせた。作品では、都市や森林や海などさまざまな風景が描かれ、近景ははっきりと遠景になるほど霞がかっていく。都市では奥に広がっていると思われるビル群が、森林では森自体の深さが、そして海では地平線が喪失している。都市や森林では、その空間の広さや大きさが曖昧になっているのに対し、海景では、水平線という空と海の視覚的な境界概念が曖昧になっている。 (The gap between the sky and the sea,H 72.7cm x W 91cm x D 2.7cm,Chiho Yonemushi, 2019) 作品詳細はこちら 森林と都市が空間把握の不可能性であるのに対し、海景は水平線という錯覚によって生まれる境界概念の喪失という点では、むしろ視覚によって認識される表面的な世界の虚構をあばき、 その奥に在る世界の実態へと私たちを誘うものでもある。この意味で米蒸の作品は、日常的なモチーフを通して、既存の認識を揺さぶり、日々の世界の見え方を再構築するきっかけになるものであると言える。海景というモチーフについては、杉本博司の「海景」シリーズを避けては通れないだろう。本シリーズについて杉本は、自身のウェブサイトにて以下のように説明する。 "水と空気、このあまりにも当たり前のように在るために、ほとんど注意を引くことのない存在が、私達の存在を保証している。この世の始まりは「水と空気が与えられたとせよ」という神話から始まったのだ。生命現象は、水と空気、それに光も加わって発生した。どうしてそのようなことになったのか、については偶然という神が存在した、とでも言っておくしかない。太陽系の中で、水と空気が保たれている惑星があって、おまけに太陽から適度の距離にあって、たまたま温度が生命発生の条件に適していた。そんな惑星なら、この広い宇宙の中にもう一つぐらいあってもよさそうなものだが、見渡すかぎり、似たような惑星はひとつとして見つけることはできない。このありがたくて不思議な水と空気は、海となって私達の前にある。私は海を見る度に、先祖返りをするような心の安らぎを覚える。そして、私は海を見る旅に、出た。" 上記の通り、彼は本作品シリーズにおいて、空気と水という生命にとって根源的な要素を捉えることを試みている。そうして捉えられた波の細かな表情や空気中の粒子を捉えたような空気の雰囲気は、 米蒸の作品の不明瞭さとは対照的でありながらも、世界の真実を捉え、表現しようという点において類似しているとも言える。また、杉本はいわゆる銀塩プリントの手法によって作品を制作する。これはフィルムに映し出されたイメージを暗室にて印画紙にプリントするものである。これは銀粒子の酸化還元を利用したプリント方法であり、写真によって独特な粒子感を見てとることができる。つまりこのイメージは言わば粒子の集合なのである。これに対し、米蒸が用いる胡粉は貝殻から作られ、岩絵具はその名の通り鉱物を砕いて作られる。それらもまた共に粒子なのである。そして、彼女の場合、この粒子が画面を(すなわち視界を)覆うという構造は作家自身が体験したホワイトアウトと重なるものでもあるのだ。 (Between the Sky and the Sea,H 41cm x...

Feature Post

デジタルアート専門のアートフェアがフランスで開催

デジタルアート並びに現代アート専門のアートフェア「Contemporary and Digital Art Fair (以下、CADAF) 」は、この度新型コロナウイルスの影響を鑑み、今年の開催をオンラインに切り替えることを発表した。 2019年にスタートした新興フェアであるCADAFはデジタルアートおよび現代アートに特化した唯一のカラーを備えたアートフェア。前回はマイアミとニューヨークで開催されたが、今年は新型コロナウイルスに影響によってオフライン開催を断念、その代わりに2020年6月11日から13日の会期で、パリを拠点にオンライン開催を実施する。 デジタルアートと言えば、明らかにインターネットの成長と伴に開拓されてきたアートの方法あるいは媒体の一つだが、最近ではルーメン賞などの国際賞の登場などその地歩を固めつつある。イニシャルコストの低さやブロックチェーンなど最新技術との相性の良さもアドバンスの一つだろう。 今回、CADAF サイドは約50のアーティスト並びに15のギャラリーの参加を公表しているものの詳細は明らかにしていない。会場となるサイトはホワイトキューブを意識したバーチャルブースとなり、また来場者は無料で入場が可能だと言う。最高責任者のElena Zavelev氏は「デジタルアートの作家の発表のためのプラットフォームはまだ整っていない」と語るが、現況も併せ、同ジャンルの台頭は加速するだろうか。 参照元:https://cadaf.art/

Rafa Mataを知るための6つのポイント

人の視線を集めるビビットでポップなイラスト。でもよく見ると、不気味なクリーチャーのような生き物が描かれていたり、現代を風刺したようなスパイスの効いたキャプションが添えられている。背景に描かれた街には日本語で描かれたネオンに光る看板があったりと、不思議な魅力を持つRafa Mataのアート作品。彼はそこから現代を生きる私達に何を伝えようとしているのだろうか。 1.経歴 Rafa Mataはスペインのマドリッドを拠点に活動しているアーティスト。大手広告代理店のMcCann EricksonやOgilvy & Mather、Havasなどで広告イラストレーターとして10年間勤務した過去を持つ。アメリカのロサンゼルスに住み、ハリウッドの脚本家と一緒に作品を作る仕事も経験した。彼の作品から感じる、人の視線を集めるようなキャッチーなデザインの魅力は、これらの経験から来ているのだろう。 2.繊細で、生き生きとしていて、不気味 作品全体を通して、都市の中で日常生活を送る女性が描かれており、ぱっと見ただけでは、ポップな印象を与えるただのポスターのように見える。しかしそこには深いメッセージ性が込められていることに気づいた。その1つに「Level Up」という作品がある。ここでは眼鏡をかけた女性が携帯ゲーム機を持ちながら座って休んでいる。休憩中にゲーム機で遊ぶ1日の中の短い時間。そんな短い時間のあいだにも世界では色々な出来事が起きていて、自分の周りの状況は知らないうちに刻一刻と変化している。それはゲーム機を見る前とは少し違う世界だ。右下にある「ゲームオーバー」という文字は、他の事に気を取られて世界から孤立してしまっていることを指しているように思えた。私達は日々忙しく様々なことに気を取られやすい。でもそうやって誰かが作ったものを通して見ているだけでは、変化に取り残されて、孤立してしまうというRafa Mataの込めたメッセージがある。電子機器が身近な存在になっている私達にとって、非常に考えさせられる点だ。 3.作品のテーマと「現代」 冒頭でも触れたように、現代を風刺したような私達が抱えがちな問題をテーマにしていることが多い。その中にはソーシャルメディアやセルフイメージ、アイデンティティといったものも取り上げられている。「Macrobian Portrait II」という作品では、女性が不思議な柄の服を着てこちらを見ている。デザイン的な肖像画のように見えるが、読み解いていくと印象が変わった。以前はブランドが人々の注目を集めようとして広告を出していたのに、今ではSNSを通して匿名の人達がブランドの注目を集めようとしている。SNSの中でトップモデルになっても、ファンは携帯電話の向こう側で撮影も一人。服の柄からは、誰もが生活の中でソーシャルメディアや広告、ウイルスに囲まれて生きていることが示されおり、SNSで多くの人気を得たとしても、見方を変えれば孤立しているのでは?というRafa Mataの考えから表現された作品だ。 4.アートによるメッセージと私達 脳は情報の約90%は視覚から取り入れているという結果も出ており、アートは私達に必要な多くの情報を与えてくれている。毎日の生活の中で何気なく行っていることでも、アート作品を見ることで深く考え直すことがある。与えられた情報を生活のなかで役立てることは誰にでもできる。Rafa Mataのアート作品から共感したり、自分自身のことについて振り返る機会になっただろうか。もしそうならRafa Mataのアート作品は、私達の人生を豊かに変えるきっかけとなるだろう。 5.「孤立」をポップに描くこと 孤立した女性を多く取り上げているRafa Mata。SNSやスマートフォンの発達からたくさんの繋がりが持てる時代になったからこそ、私達に「孤立とはどういうことなのか」本質をついた視点で教えてくれている。人に囲まれて生きているというだけでは、孤立していないとは言えないのかもしれない。そのような社会的なテーマに対して、東洋と西洋、神話と現代、伝統的な神々と現代のウィルスやバクテリアなどを、固定概念に囚われずにユニークに組み合わせている。その巧みな技が、この作品全体を重い雰囲気にせずに、ポップな印象に仕上げてくれているのだ。 6.Rafa Mataが描く独自のアートスタイルの開発 現在では初の出版プロジェクトや、展覧会の企画、新しいアートスタイルの開発をしている。InstagramやTwitterで日々の活動を発信をしており、最新の作品を気軽にチェックすることができる。そこではアナログ作品の線画を実際に描いている様子が短い動画で載せられていたりと、ファンを楽しませる工夫がされていて飽きさせない。これからもRafa Mataからの現代を生きる私達へのメッセージに注目していきたい。

国立新美術館での展覧会「イメージ・ナラティブ」国立新美術館で開催される「日本の現代美術における文学」展について

Keizo Kitajima, TSILCARL VILLAGE ARMENIA (From the series USSR 1991), 1991/2019, Pigment print 66.0×93.0cm Collection of the artist ©KITAJIMA KEIZO 2019年8月28日から11月11日まで、国立新美術館東京では、日本の現代美術作家6名によるグループ展を開催します。展覧会のタイトルは「イメージの物語」。日本の現代美術における文学」。タイトルの通り、日本の現代アートシーンにおける文学的表現に焦点を当てた展覧会です。出展作品には文学的な要素が共通しており、詩のような比喩的な表現がなされています。直接的なメッセージを表現するのではなく、作品の中の時代や場所、人物を想像することを示唆している。 国立新美術館の展覧会公式発表によると、古代ローマの詩人ホラーチェの『アルス・ポエティカ』に由来する、「絵画も詩であるように、詩も詩である」という意味の「Ut pictura poesis」という言葉があります。この言葉は、絵画(視覚芸術)と詩がいかに密接に結びついているかを説明する際によく引用されます。 今回紹介する6人の日本人現代美術家は、1950年代生まれの北島敬三から1980年代生まれのミヤギフトシまで、年齢も様々だ。美術館に入ると、まず第1室を占めるのは、国内外で活躍する田村友一郎氏。部屋全体が「幻覚」をコンセプトにした彼の新作「スカイアイズ」となる。作家は、日本でいう "幻覚 "とは...

現代アートは遊び場になり得るのか?

"今が遊び時" 東京都現代美術館 大人になると、「ゲームをやめろ、おもちゃや友達と遊ぶのをやめろ」などと言われてきましたが、大人になってからも同じようなことを繰り返しているかもしれません。大人になってからも、同じようなことを繰り返し、このような質問をすることがあります。仲間とつるむのをやめようか、もっと勉強して頑張ろうか」とか、そんなことを考えることがあります。 そう、人生は決して楽なものではありません。それは誰にでも、どんな時にも当てはまります。では、「遊ぶ」時間をきちんと持てるのはいつなのか、何かで遊ぶことを心から楽しめるのはいつなのか。仕事や勉強の時間も必要ですが、遊びの時間を過小評価してはいけません。遊びの時間は、自分自身や世界に新しい価値観を見出す機会を与えてくれることがあるからです。 では、現代アートについてどのように感じていますか?美術館やギャラリーに行くと、遊びの時間として感じますか?そうでなければ あなたは現代美術をもっと勉強して発見すべき難しいテーマだと思っていますか?現代美術についてどのように考えていても、「現代美術は難しい」という意見もあります。 東京都現代美術館では、「今、遊ぶ時間」と題した展覧会を開催しています。子どもだけでなく、大人も現代美術の「遊びの時間」を楽しめるように企画された展覧会です。 本展では、Yoshiaki Kaihatsu, Kazuhiro Nomura, team Hamburg, Tanotaiga, TOLTA, Usioの6人のアーティストとアーティスト・コレクティブによる作品を展示します。それぞれの作品は、ゲーム感覚で参加することができます。第一展示室に入ると、壁一面が巨大なキャビネットで覆われている。圧倒的なスケールに加えて、キャビネットがボルダリングのクライミングウォールになっているため、目を引く。観客は作品に圧倒されるかもしれないが、キャビネットの扉を開けると別の展示室につながっている。ユーモラスで楽しい作品のようだが、作家の開発良明氏によると、「受験の壁」は、実は受験のプレッシャーやストレスを表現したものだという。 もう一つの興味深い作品は、タノタイガの「Tanonymous」。Tanonymousは壁一面を無数の仮面で覆っている作品である。作家の無表情な顔をベースにした多数の仮面が、参加型のワークショップから観客によって徐々に多様な顔に変化していきます。ワークショップでは、美術館が用意した素材を使って、無地の仮面を自由にデコレーションします。最終的には、これらの多様な顔のすべてが、'Tanonymous'の作品として展示されることになります。 アーティストのタノタイガは、基本的には美術作品の中で社会システムや価値観を探り、マスメディアや画一化された記号が日常生活の中で持つ力を考察しています。作品タイトルの「タノワイマス」は、作家名の「タノタイガ」と「アノニマス」の複合語です。作家は作品を通して、標準化された社会と現代社会に蔓延する匿名性を批判的に見つめています。観客が好きなように仮面を飾ることで、観客はやがて鑑賞者となり、同時に制作者となる。美術館の中の同じ顔が徐々に様々な顔に変化していく過程で、作家は自分の考えを伝えたいと考えているようです。 友達と遊ぶこと、おもちゃで遊ぶこと、どんな遊びでも、私たちに充電の時間を与えてくれます。展覧会を通して、作家は社会に関するテーマを表現しており、展覧会や美術館は遊び場にもなっています。現代美術が遊び場になるという意味では、展覧会を見る(遊ぶ)価値があると言えるでしょう。観客の参加が作品の一部となり、場合によっては観客の遊びの痕跡が作品の一部として残ることもあるでしょう。 東京都現代美術館では、2019年10月20日thまで「今が遊び時」展を開催しています。参加型のアート作品とともに、観客がアーティストと一緒に遊ぶことができる関連プログラムやワークショップも開催されています。詳細や情報はこちら。https://www.mot-art-museum.jp/en/exhibitions/time-to-play/。 記事を書いた人:Jeongeun Jo 韓国出身で現在は日本在住。東京藝術大学大学院美術研究科を卒業したTRiCERAのメンバーの一人。彼女自身もアーティストとして活動している。

Editor's Choice