レオナルド・ダ・ヴィンチの『小貂を抱く貴婦人』とは−言うまでもなく著名な作品ではあるけれど−上品そうな女性がオコジョを腕に抱いているにおける、54.8 cm × 40.3 cmのペインティングだ。オコジョは純潔性の象徴らしいが、一方で14-5世紀の貴族の間では著名なペットでもあったという。


人と動物の共生の歴史は長く古く、遡ればラスコーの時代から人々は動物を飼い慣らし、時に愛玩し、時に狩のパートナーとして生活を共にしてきた。
古代エジプトでは動物に名前を与えていたし、古代ギリシャでは亡くなった犬のために墓穴を掘り、墓石を建て、飼い主はその墓にメッセージを刻みつけて悲しみを形容する習慣があった。

Ray_Cervus
145.6cm x 103cm

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かくも長い歴史だが、とはいえ、動物が絵画の題材となり始めたのは、動向としては、主に17-8世紀頃のことだった。
博物学の一環として動植物がイラストレーションされることは多々あった。けれど「動物画」として、つまり絵画の一ジャンルとしてフラン・スナイダーズやジョージ・スタッブスのように動物をメインをモチーフとした画家たちの登場はその時期を待たなくていけない。

では、なぜ人は動物の絵を描くのだろうか。
第一に、ダ・ヴィンチ のような象徴的用法もあるだろう。
実在する動物ではないが(少なくとも筆者は見たことがない)、例えばユニコーンは、少女の清らかさを指し示すモチーフとして15世紀の絵画界で使用された。

この象徴という見方は、絵画の中に動物がいることについて一種のストーリーを読み取ることを許すだろう。例えば少女と動物をモチーフにするSELUGI KIMの作品を見てみよう。

girl_4
40cm x 40cm

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彼女の絵画の中の少女が一緒にいるのは友人でも家族でも、ましてや学校の先生でもミッキー・マウスでもなく、一匹のフラミンゴだ。
「文化と愛という名のもと、社会では偽装が多く行われている」と彼女は語るが、その言葉と共に鑑賞すると、フラミンゴと少女しかいない世界は社会の矛盾や清廉さとは反対の、ある種の理想郷的な世界を物語っている様を読み取りたくなる。

Girl sitting on a flamingo
72.7cm x 53cm

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動物の「イメージ」という点ではどうだろう。
例えば狼は『赤ずきんちゃん』『三匹のこぶた』など物語の中では常に悪役だ。そして狼と聞けば、どうだろう、善良的なモラリストをイメージすることは少ないのではないか。この物語が作り出した狼の運命について、苅谷はそれとなく言及している。
人間によって紡がれ、語られて来た物語のおかげ嫌われ者になってしまった狼。ある種のイメージ操作の結果をを、そしてそのイメージを固定し続ける者たちの姿を、彼女は公平な視点から描き出している。

Wolf
50cm x 61cm 

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ペットという視点ではどうだろうか?
人はペットを、自分たちの異種の家族を、どう描いてきただろう。そのストーリーはどうだろうか。

萩原のペインティングにおけるペットは、ある意味、現代の風俗が見て取れる。
〈we use botanical shampoo〉と名付けられた作品に描かれる犬たちは、思うに、普段からボタニカル・シャンプーで身を清めているに違いない。

We use botanical shampoo
90cm x 65cm

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反面、ペットの視点から描かれた作品も存在する。久保俊太郎の絵画がそれだ。
彼は「ペットが受ける過剰な愛は、時として一方的になる」という視点から武装する動物たちを描き出す。
もちろん適量の愛情が注がれるケースがほとんどと信じたいが、しかしそうでない時、そしてもはや愛育とは反対のケースにすらなる時、ペットは近所の交番に電話一本を入れることも出来ない。
彼の作品のにおける猫やウサギたちは人間に反抗し、武装し、自分たちの自由を手に入れるためにレジスタンスを展開する。「もしも」の世界を描いたわけだが、普段は見えない世界を描き出した点で、久保の絵画は想像力の所産の代表と言っていいだろう。

Heavy Army (Scottish Fold)
31.5cm x 24.5cm
Oxytocin
170cm x 86cm

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もちろん動物にも固有の世界があるし、そこに人間がいるとは限らない。長沼が描くライオンやリスが安らぐ画面世界は、完全に動物だけの世界だ。動物たちが彼らのルールで、彼らの世界を生きている。現実にはなかなか見ることはない。どこも人間が管理をしているからだ。
その意味では、どことなく切なく、そして憧憬を起こす清らかさがあるようにも見える。

Touch (tactile)
44.5cm x 36.5cm

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動物たちを描いた絵画には、それこそジャングルのように、固有のストーリーを読むことができる。
自宅の壁の一画に、動物という、異世界を設けてみるのもいいかもしれない。

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