月曜日, 10月 18, 2021
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小山登美夫ギャラリーでのVarda Caivano’s個展


Varda Caivano,”Untitled”, 2019, water-based oil paint (gouache and ink) on linen, 90.9 x 57.6 cm (frame: 150.9 x 117.6 cm), ©Varda Caivano, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

10月11日から11月9日まで、小山登美夫ギャラリーにて、イギリス・ロンドン在住の画家ヴァルダ・カイバーノの個展が開催されます。カイバーノは1971年ブエノスアイレス生まれ、2000年代初頭よりイギリスを拠点に活動しています。小山登美夫ギャラリーでの4回目の個展となる本展では、最新作を発表します。

彼女の芸術的な実践では、絵画のプロセスそのものが彼女の主な関心事となります。カイヴァーノは、作品のプロセスを重視しながらも、物質性にも注目しています。彼女の作品は、多様な色彩、筆致、豊かな層といった「絵画」の基本的な特徴を中心に構成されています。今回の作品では、作品の中の余白を強調した作品へと絵画の幅を広げました。これまでの整然としたキャンバスの全面に描かれた作品とは異なり、無彩色の空間を強調し、粗い麻の布を使用した作品に挑戦しています。キャンバスの限られた空間から無限の空間を可能にするのが余白です。そのため、作品の余白は、その余白の先にある観客の想像力を刺激します。彼女の作品は、独自のスタイルを保ちながら、様々な表現方法で作品を展開していると言えます。


The Installation view of Varda Caivano’s solo exhibition (2019) ©Varda Caivano, Courtesy of Tomio Koyama Gallery



The Installation view of Varda Caivano’s solo exhibition (2019) ©Varda Caivano, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

描かれたものだけに焦点を当ててみても、以前の彼女の作品と完全には変わりません。彼女のテーマは変わらないが、それを効果的に、あるいは多様な方法で表現する方法を変えただけである。カイヴァーノは「プロセス」に焦点を当てているので、物質性も際立っています。彼女の作品における「プロセス」とは何か。それは、どのようなコラージュを作るかというような意思決定と観察の繰り返しかもしれません。また、キャンバスの上で色を合わせることを考えることかもしれません。

その結果、彼女の作品は、物質性、彼女の関心事、時間を含むプロセスの痕跡となる。彼女の時間や関心事の痕跡は、特定の描写(描写)ではないように思われます。カイヴァーノ自身は、作品について以下のように考えています。

“私は絵画を表象というよりも、詩や音楽の文脈の中でのプレゼンテーションのようなものだと考えています。”

(ヴァルダ・カイヴァーノ インタビュー。”想像力をかきたてる無限の絵画”インタビュアー 島田耕太郎『美術手帖』2017年2月号)。

また、2016年より小山登美夫ギャラリーでの4回目の個展となる本展では、最新のペインティング作品9点と、コラージュ、ドローイング、紙に描く作品などの額装作品を新たに展示します。さらに今回の新作では、これまでのシリーズから使用されていた色が変更されています。2016年の日本での個展で展示された前シリーズ「Grey Paintings」ではグレーを中心とした色使いをしていましたが、今回の新作では以前よりも赤や黄色、緑などの鮮やかな色使いが見られるようになっています。

一言で言えば、彼女の作品は、キャンバスの中で停滞しているものではなく、詩や音楽の文脈のような流動的なリズムを持っているようにも見えます。特にフレームと意図的な余白を使った新しい提示方法は、彼女の流動的なテーマを最大限に引き出している。

Varda Caivano’sの個展

DATES:2019年10月11日(金)~11月9日(土)

営業時間 : 午前11時~午後7時
日曜、月曜、祝日はお休みです。
入場無料。

記事を書いた人:Jeongeun Jo
韓国出身、日本在住。東京藝術大学大学院美術研究科を卒業したTRiCERAのメンバーの一人。彼女自身もアーティストとして活動している。

Shinzo Okuokahttps://www.tricera.net/
1992年東京都出身。大学でインド哲学を学んだ後出版社に勤務し、アート雑誌と神社専門誌の副編集長として雑誌及び書籍の企画・編集に携わる。2019年にスタートアップ企業である株式会社TRiCERAに参加、日本初の現代アート専門の越境ECの開発及びアーティストのマネジメント、自社オウンドメディアの立ち上げを担当する。特技は速筆で、雑誌時代には1ヶ月で約150ページを1人で取材・執筆した。

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漫画はアートとしてどう流通するか?集英社によるマンガアート「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」が始動。

集英社はこの度、同社がこれまでに発行したコミックスを限定エディションのマルチプル作品として国内外に販売するプロジェクト「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」を始動。ポスターなど複製品としてコミックスが流通するケースはあったが、あくまでもアートワークのコンテクストに則って展開されることは国内でも例がない。漫画をアートというフォーマットにどのように落とし込み、どのように事業として成長させるのか。ECサイトの封切りに伴い、このプロジェクトのディレクター 岡本正史、それから現代アートの越境EC「TRiCERA.net」を運営する株式会社TRiCERAの井口泰が対談を行った。   アートとして「漫画」をどう見るか 井口泰(以下、井口) 第一声から申し訳ありませんが、まず1人の漫画ファンとして今回の対談はすごく嬉しく思っています(笑)。 岡本正史(以下、岡本) ありがとうございます(笑)。 井口 今回は集英社さんが開始される「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」、それからアートとして漫画の可能性についてお話ができればと思っていますが、まず後者の方の漫画をアートとして展開しようと考えたきっかけと言いますか、プロジェクトの経緯から聞いてもいいですか? 岡本 話を遡ると、実は発端となっているのは2007年頃になるんですね。その頃に集英社のコミックスをデジタルアーカイブしようという動きが立ち上がったんですが、とはいえ当時はまだスマホもないし、デジタルデータを活用して何か新しいことをしようという機運も活発とは言えなかった。ガラケーのコミックスに使ったり、あとは海外の翻訳出版のために使えればと。「デジタルアーカイブ」という言葉というか、その概念自体がまだ新しかった時代です。 井口 対象は集英社が出版したコミックス全てですか? 岡本 ほとんど全てですね。 井口 膨大な数になるような...(笑)。 岡本 なります(笑)。集英社は年間で800点ほど新しいコミックスを出しているので、今はだいたい300万ページ分くらいかな。スキャナーも、当時はイスラエル製の最高の機材を使って、とにかくクオリティの高いアーカイブを作成しよう、と。それが時を経てスマホ革命もあり、デジタルコミックスの製作にアーカイブデータが活用できるようになりました。でも作品の中にはすごく描き込みがされた絵もあって、「これは別の形でも世の中に出すべきじゃないか?」と思い始めたんですね。コミックスやタブレット、スマホのサイズではなく、媒体も変えて、何か違うフォーマットで世の中に打ち出すことも出来るんじゃないか、と。 井口 なるほど。つまり作成したアーカイブをアウトプットする方法としてアートを、ということですよね。興味深いなと思うのは、同じ絵でも、コミックスの時と絵画にした時では見え方が違うと思うんです。漫画はストーリーがあって、体験としてはすごく流動的。でもアート、特に平面作品は基本的には壁に固定されているわけで、体験として大きく開きがあると思うんです。 岡本 おっしゃる通りで、漫画は時間芸術なので、一枚の絵として抜き出して鑑賞する場合は違った風に見えてくるとは思いますね。例えば『ONE PIECE』の読者でも「こんなシーンあったっけ?」と思うはず。壁にかけられた状態で対峙する漫画は、またコミックスのそれとは違った発見があると思うんですね。 井口 漫画というコンテンツをベースに異なる体験を生み出す。 岡本 まさに。このプロジェクトはアーカイブという、漫画の原画の保存という観点から始まったわけですけど、「ただデジタル化して終わり」とか、単なる複製品をつくりたいわけではない。コミックスや作家さんのクリエイションを違う体験を通して受け継いでいくところがしたいし、そこにこそ意義があるとは考えてますね。 アートとしての価値をどうつくるか 井口 一方で、これはもっと実際的な話になりますけど、「漫画をアートとして販売する」ことには色んな課題が含んでいると思うんですね。現代アートという産業には既存の仕組みがあり、その中でどうやってポジションをつくっていくかという問題もある…。それに、もっと言えばアートの市場自体は漫画と比べると小さい。マーケットとして異なる業界への参入にはどう考えていますか? 岡本 その話で言うと、少し数字的なところから入るけれど、USBのレポートによれば世界の美術品市場は全体で7億円くらいですよね。で、日本のアート産業はと言うと3590億円で、美術品に絞ると2580億円程度。実はこの数字自体はすごく馴染み深くて。実は2020年の日本のデジタルコミックス売上が3400億円強で、大体同じなんですね。この規模感を見ていくと、5年後、10年後に「マンガアート」を100億円程度の大きさに育てていくビジョンを立てることは難しくはないと思っていて。 井口 漫画全体で考えると大きな規模になるでしょうね。 岡本 まさにそうで、集英社だけでも『ONE PIECE』や他の漫画数作品を手掛けているだけでも、絶対的に手一杯になってしまう。他の出版社の作品も入ってくれば、マーケットのサイズも成長が見込めるだろう、と。 井口 しかも「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」は越境ECですよね。海外のマーケットの方が圧倒的に大きいアートマーケットのことを考えると鋭い判断だったと思います。 岡本 評価いただき、ありがとうございます。でも「アートマーケット」の中で、既存のジャンルとバッティングするようなことにはしたくないとも考えています。絵画にしろ、彫刻にしろ、アートにも様々なジャンルがあると思うんですけど、市場の中でそれらと競合し、シェアを奪うようなことはしたくない。「したくない」と言うより、面白くないと思うんですよね。 むしろ、他のジャンルとコラボレーションする。工芸の作家さんとコラボレーションして、漆塗りの額縁をいっしょに作ってもらうとか。アート作品として、しかも日本のクリエーションとして海外にプレゼンテーションしていくと考えた時、そういう他のジャンルと協力することが重要になって来るとは思いますね。 井口 漫画をアートのジャンルに広げながら、既存のアートとの共生というか、新しい価値を生み出していく。 岡本 そう、そこが面白いと思うんです。これまでもポスターとか、例えば複製画とかはあった。でもアートとしてのクオリティを担保させた、つまりアートワークとしてコミックスを展開させる発想はどこにもなかったわけですよね。もちろん集英社としても初めての試みだし、業界にとっても新しいことだとは思うんです。 井口 今「アートとして」と仰いましたけど、その点で言うと、僕なんかはブロックチェーンによる証明書の発行は面白いと言うか、ある種の核心をついていると思います。アートに携わっている者の業と言いますか(笑)、ブロックチェーンや証明書と聞くと流通のあり方や価値形成や担保について考えているだろうな、とは想像がつくんです。というのも、今回はマルチプルな作品として展開させると思うんですが、そうなった時にはエディション管理の話は必須になってくる。 岡本 そうですね。そもそも、このプロジェクトに可能性を感じたきっかけもまさにそれで。今回はとにかく「複製品を売っている」と捉えられることは避けたかった。そうするとエディション管理とか、流通のさせ方にも工夫というか、アート作品として市場に流れていくロジックが必要だったんですよね。スタートバーンのブロックチェーンシステムはそういう意味では一つの大きなきっかけでしたね。 井口 今のお話にポイントがあったと思うんですが、その「アートとして流通させる」という点はすごく重要で、僕は現代アートとはジャンルというよりは一つの仕組みだと思っているんですね。けれど、そう考えた時、先ほどの話の繰り返しになりますけど、やはり版画や写真のような再制作が可能な作品の流通ではエディション管理、もっと言えば市場での価値の管理がすごく重要になる。 岡本 おっしゃるとおりだと思います。 井口 むしろそこさえクリアできれば、なんと言いますか、土壌は出来ていると思うんです。今の現代アートではKAWSをはじめ、もともとは外の世界にいた人たちが受容されていく傾向がある。ストリートアートやポップアート、あるいはイラストレーションが一つのジャンルになったわけですよね。言い過ぎかもしれませんが、そこに漫画という新しいジャンルが入ってくる下地はあるんじゃないのかな、と。こんなこと言うと、また方々から「言い過ぎだ」とかお叱りを受けるかもしれませんが(笑)。 岡本 いや、でも言っていることは分かります。でも、だからこそいかに丁寧に価値をつくっていくか、というところは重要になる。梱包一つとってもそうだし、配送もそう、もちろん証明書の話だってそうですよね。 井口 フランスでは漫画は九番目のアートとも言われているし(笑)。でも今お話になっている通り、現代アートは仕組みの世界で、そこにはルールがある。その「お作法」と言いますか、商慣習のようなものをおさえている点がストイックだし、このプロジェクトが本気なのだなと感じます。 岡本 ただその文脈で話をすると、一方では現代アートというか、ファインアートの中枢みたいなところとのバッティングは避けたい。あくまでも漫画というバックグラウンドは意識するし、ファインアートにも既存のやり方や作法がある。そこへ無理に合わせようとするとよくないんじゃないか、と。もちろん全く無視はしないし、だからこそブロックチェーン証明書の話もあるんですが…。もっと広い意味でのアートとして定着させたいし、それ独自の文脈や価値を考えていく必要があると思っています。 井口 なるほど。あと価値の点で言うと、これは個人的な意見ですけど、価値って感じ取るもので、それは共通の価値つまり認識が生まれることで大きくなっていくと思うんですね。その共通の価値が大きくなって総体的な価値が生まれる。マンガアートがどうやってアートとしての価値を生み出していくのか、この点はすごく可能性があるし、興味があります。 漫画の継承の方法としての「マンガアート」 井口 核心と言うか、少し突っ込んだ話ですが、この「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」と複製品の最大の違いはどこにあると考えてますか? 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Quick Insight Vol.11無気力な少女たちを通して、現実における既存の意味をリセットしていく日本人アーティストmamoruが描く、物憂げな並行世界。

mamoruは無気力な少女たちを中心に、日常的でありながらどこかズレたシチュエーションをキッチュに描く。イメージを補足するように登場する言葉たちは、それ自体にメッセージ性はなく、無意義なフレーズもしくは画面を構成するための記号である。彼の作品に登場する無気力さや、無意義さなどは既存の価値を無視あるいは、リセットしようとしているようだ。 今回は、意味、価値、結果、理論などが求められる現代において、そうした社会的な有意義性からエスケープする彼の自由な視点とそのさきに広がるもう一つの世界に迫る。 制作を始めたきっかけはなんでしょうか。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、緊急事態宣言やロックダウンがあり、家にいる時間が多くなりました。その時に家にいてやる事がなくて、いっちょ久しぶりに絵でも描いてみるかという事で始めました。 もともと美大に通っていたので絵は描いていました。 そもそも、美大に入ったきっかけも、絵を描くのが好きだったからです。でも、もとは大学に行こうとはおもってなかったんですよ。高校受験も推薦で入ったし、初めは大学に行こうなんて考えもしなかった。でも、美大は国語、英語と実技だけでいけるって知って、その時社会にまだ出たくないという思もあって、美大を受験したんです。 美大を卒業してからはCM制作会社に入社しました。私が就活をしたのは3/11があった年だったので、就職には苦労しました。結局、夏頃動き始めて3年間働き、その後、芸能事務所のマネージャーに転職して、今は、大阪で結婚指輪を作っています。 イラストを描き始めてからは、いくつかイラスト制作の依頼もあり、それらを断らずに制作してきた結果、法人の依頼を受けて、仕事が広がるきっかけにもなりました。そういった中で、海外からのお問い合わせもあって、TRiCERAに参加しました。 物作りをしたり、絵を描いたり、何かを生み出すというのが好きだからというのもあるけど、 承認欲求が高いように感じていて、インスタをやってるのですが、そこにイラストを投稿すると、いいねとかをもらえるんですね。それはわかりやすく、他人からいい評価をもらえてるという実感につながるんです。 現在の制作のテーマについて教えてください。 女の子を描いていくという事がテーマになっています。ぼーっとしていて、なんとなくクスっとしてしまうような女の子。ただ、表情を描く事が苦手だし、伝えたい事や強いメッセージが自分の中にあるわけでもないんですよね。だから、感情を強く表現するといういうよりはあえて無表情にしてる。見た人の想像をかきたてるように。 《dechi, H 30cm x W 30cm x D 3.7cm, Canvas Print, 2021》 作品詳細はこちら かわいい女性というアイコニックなモチーフについて、なぜ「無気力」な女性を描くのでしょうか。 さっきも少し話しましたが、大元は描けないからですね。笑顔を描くのは難しく感じます。本当は笑顔はしわがよったりするけれども、イラストでリアルに表現をしようとすると、うまく描けない。ちょっと気持ちわるくなったりするんです。だから、表情やそういったものがないということを一つの方向性としてやっていくことにしました。 《Floating, H 30cm x W 30cm x D 3.7cm, Canvas Print, 2021》 作品詳細はこちら 日常的な設定ながら、少し視点をずらしたような設定を描いているものが多いように思いますが、シーンの設定についてこだわりや意図があるでしょうか。 やっぱり、見てる人が面白いなと思うことが大事だと考えています。そのために、色々な資料を集めながらやっています。ポーズとか服装とか、髪型とか。そういったものを見ている中で、このイメージにマヨネーズを足したらおもしろいかもとか、いろんなアイデアを出していくんです。 あとは、インスタグラムでハッシュタグを調べたりもしますし、それを利用したりもします。誰も使ってないハッシュタグを使ったり、フォロワーさんが違うハッシュタグをコメントしてくれたりすることもあります。 例えば、《mayonnaise forever》(2021)という作品は、「ずっと真夜中でいいのに。」というアーティストがいるのですが、それを略して「ずとまよ」というらしいんです。 こうしたパロディー的なところが僕の作品にはあって、インスタに投稿した《The...

「完売作家が描く食とアート」START ARTIST vol.9 ~ Kenta Nakajima

TRiCERA発のオークションイベント「START」第一弾の出展作家の"なぜSTARTに出展したか"を主軸にしたインタビュー、ならびに新作の紹介を行います。 オークションイベント「START」とは 2021年2月に行われた「START」。アートに携わる様々な人たちを「セレクター」としてゲストに招き、それぞれの視点からアーティストを選び、そしてその魅力を伝える言葉と共に、その作品をオークション形式で販売いたしました。「アートをこれから始める」という方にも分かりやすい設計を行い、またオークションがはじめての方、オンラインではじめてアートを買う方など、様々なひとたちの「スタート」になるような企画となっております。 作家紹介 中島健太 (Kenta Nakajima) 1984年東京都出身。大学で油絵を学ぶ傍ら、3年次にプロデビュー。 「500点以上が完売」となっている中島の絵画は、発表作品の全てが売約となるのみならず、その繊細な技術から日本最大の美術団体である「日展」でも特選を2度受賞した。 「START」に参加したきっかけ アーティスト活動を行う上でアートと日常生活の解離への反抗とその調和を目指しており、アートをまだ手にしたことがない人にもアートをより身近に感じていただきたいと考えています。 同時に、常に今までの概念には無い、枠組みにとらわれないということを心がけており、高橋 紀成さんからTRiCERA ARTが主催するオークションイベント「START」を紹介された時、そのVisionに共感できたことが参加に至った経緯です。 作品一覧はこちら 「START」に出典した作品について 作品名:Soul food サイズ:31.9 × 31.9cm 技法:キャンバスに油彩 「START」では今までアートを購入されたことがない方が参加されるイベントであり、そういった方により身近に感じていただける作品をと思い「Soul food」を出展した。「Soul food」は、まさに日本の"Soul food"であるラーメンを、金箔の背景に描いたものである。このラーメンは半世紀近い歴史があり、ラーメン界のなかでもエネルギッシュな存在として認知されている「ラーメン二郎」をモチーフとしている。 また、背景で使用されている金の歴史は紀元前の昔にまで遡ると言われており、高い耐酸化性をもち他の金属と比較しても錆びにくく、腐食・退色が極めて少なく「不変の輝き」をもつことが特徴である。「Soul food」は、そんな金の背景をコントラストとして「ラーメン二郎」をモチーフとしたラーメンを描くことで、力強さと持続性を表現した作品である。作品は芸能人の方に落札いただきました。 既存作品の紹介 作品名:Salmon roe 作品サイズ:18.5 × 18.5 cm 技法:木製パネルに金粉と油絵   作品価格 200,000円 購入はこちらから 「Salmon roe」はサーモンといくらの鮨がモチーフとなっている。鮨は日本の代表的料理であり、ヘルシーな健康食として全世界に知られており、鮨(スシ)魚が旨いという意味の漢字を組み合わせである。鮨は近年ではSNSなどの広がりで"映える"料理として認知されている。"映える"="可愛い"と捉えられることもあり、"映える"鮨は可愛いと感じられることもある。 この「Salmon roe」はとても可愛い作品である。サーモンは日本でも海外でもとてもメジャーなネタでありこの「Salmon roe」はサーモンの上にいくらがちょこんと乗っている。鮨はネタの鮮度が命であり、鮮度の良い食材を職人の手により最適な方法で料理することで、見た目の味も他の料理とは一線を画しているまさに芸術的料理である。そんな鮨とアート作品は芸術という意味でとても近い存在であり、人々が鮨に惹かれる感覚とアートに惹かれる感覚はとても近いものがあることからこのモチーフを「Salmon roe」という作品とした。 オンラインだと、テクスチャーが分かりずらいので、分かりやすく金箔を使っているところも特徴である。金でコントラストを表現しているが同時に持続力も表している。アートと鮨という芸術作品を組み合わせ、金の背景で"映え"を演出している作品を通じてアートをより身近に感じていただきたい。 展示会などについて 中島健太は9月から12月で高島屋にて個展を実施している。 期間:2021年9月-12月 開催場所:高島屋日本橋店、京都店、横浜店、大阪店 今後の展望に関して 現在、私の飼い猫のミュシャを世界中の名画の中に描く、旅するミュシャというシリーズの絵画に取り組んでいます。ミュシャと住み始めて1年と少し。ミュシャはとても好奇心旺盛で新しいことが大好きなのですが、飼い主としてミュシャのためにできる事は何かと考えた時に真っ先に浮かんだのが、ミュシャを絵画の中で旅をさせてあげる事でした。そんなミュシャと画家だからできる旅、世界中の名画の世界を一緒に旅をしようと思います。国境も、時間も、ジャンルも超えて、いろんなところへいきたいと思っています。   作品一覧はこちら セレクター 私は仕事柄、人の紹介で作家に会わされたり、色々と売り込みをされるのだが、中島健太は最初Web上でたまたま見つけて、現在アニメ化が決定した大ヒット漫画「ブルーピリオド」の作者の山口つばさとの対談インタビュー記事に興味がわき、月刊美術の編集長に紹介してもらって私から会いにいった人物である。 アーティストは人文科学者や哲学者と横並びで、画力以外に「知性」や「洞察力」が必要である!会ってみたら予想通り、日本の旧体質な画壇の中でもがいている、頭の柔らかい知的生命体であった!画風に新しさはないが、人間性は面白い!今どこにいるかより、今どこを見て生きているのかが、人間の品性であり才能であると私は思っているので、以降、彼の行動には注目している!今より10年後に何を産み出すのかを期待させる人物である! 余談だが、私は約1年前に肖像画を依頼したのだが、1年経っても着手もしていなさそうである、、、。コミッションワーク数年待ちのアーティスト、巨匠になる前に今のうちに1枚作品を所蔵することをオススメする~~~(笑) 高橋 紀成 一般社団法人 国際文化都市整備機構(FIACS)理事 (株)風土...

中国でアートのチャリティーオークションが開催。コロナ禍でアートは何ができるか?

 アートは人間の役に立つか?  あらゆる考え方ができるだろうが、実際的な機能を考えれば役に立たないと考えることもできる。この頃のニュースで忙しなく流れていたように表現するならば「不要不急」といったところであろう。  コロナ禍において、日本では文化・芸術に携わる職業者に対し国が補助金を与えることについて批判する声が小さくない。「文化芸術不要不急説」が横行しているのだ。ドイツを筆頭に世界各国が文化・芸術に手厚い支援を行う昨今、日本は逆行する情勢にあるのだ。ただ我々日本人が知らなければならないのは、現在のような有事の際に、アートは思わぬ形で社会に役立つ、ということである。  アメリカのアートマガジン”ArtReview”によれば、中国の美術館や文化団体から成るグループが、コロナウイルスのパンデミックの影響を受けた100以上の学校に予防衛生用品を提供することを決定したという。資金源は「Standing Together Through Thick and Thin」と題した一連のチャリティーオークションはHOW美術館、Yitiao、Modern Media Group(ArtReviewとArtReview Asiaが加盟している)、ART021、そして中国国内外の80以上の主要なアート機関やギャラリー(Hauser & Wirth、Edouard Malingue、BANK、Perrotin、Lissonを含む)によって開始された。寄贈された美術品、版画、希少な収集品の売却益は慈善団体である「上海宋慶齢基金会」が子供用マスク、デジタル体温計、消毒剤、その他の保護物質を購入するために使用される。   Yitiaoオンラインプラットフォームを介して行われるオークションは、3月2日(エディション、版画、収集品)、3月3日(現代美術I)と3月4日(現代美術II)に開始され、それぞれ2日間続く。He Xun、aaajiao、Yin Xiuzhen、Lorna Simpson、Gregor Hildebrandt、Esther Mahlanguなど錚々たるメンバーの作品がすでに寄贈されているが、オークションはさらに個人のアーティストやパトロン、企業からの寄贈も募っている。   募金活動の声明の中で、主催者は「伝染病で確認された患者の数が増加している背景には、非感染者の貧しい生活があります。この流行に直面して、私たちは最前線で繰り広げられる医療の戦いを行っている人々に敬意を表します。ウイルスと闘うための勇気ある努力は、私たちをより安全な位置に置くためのものです。私たちは芸術を通じて、困難な現在に芸術が勇気を奮い立たせる力を持っていることを示し、この大きな不安の時代を経て、より良い生活への憧れを抱くことができるように、私たちのやらなければならないことを遂行したいと考えています」と述べた。    先日、緊急事態宣言が解除されたものの「with コロナ」の生活は今後も続き、引きこもりがちな生活はしばらく続きそうだ。その際、我々を楽しませてくれるゲームや漫画、テレビといったエンタメも、自分の作品に人生を費やしたアーティストやそれを支援する者によって培われた文化・芸術という強固な地盤があったからこそ生まれたのだ。  アートのように「不要不急」なものにこそ、人生の豊かさが潜んでいるのではないだろうか。 参照元: https://artreview.com/news-27-february-2020-auctions-coronavirus-pandemic/ Copyright the ArtReview 

「全てのアートプレイヤーにとってパートナーでありたい」株式会社between the arts CEO/Founder 大城崇聡

「全てのアートプレイヤーにとってパートナーでありたい」 そう話すのは、日本初のアート管理サブスクリプションサービス「美術倉庫」を展開する株式会社between the artsの代表取締役CEOの大城崇聡さん。もともとアートコレクターだった大城さんは「コレクションを管理してくれるスキームが日本にない」と感じたことをきっかけに事業を立ち上げた。 現在では元麻布にアートコレクターのための展示スペースも構えるbetween the artsの起業の背景、抱える課題意識について代表の大城さんに話を聞いた。 「自分も使ってみたい」がきっかけに まずは起業の経緯についてお聞きしたいと思いますが、もともと大城さん自身はアートコレクターだったそうですね? もともとファッションが好きで、その延長と言いますか、7年くらい前から作品をだんだんと買い始めました。ストリートカルチャーに繋がりのある作家さんが多かったですね。当時はKYNEさんとかまだまだ出始めの頃だったかな。だから、最初は一介のコレクターでした。仕事も不動産関係。職業的にはアートとは全然違うところにいました。 起業は2020年ですが、コレクターからアートビジネスのプレイヤーに至った経緯はなんだったんでしょう? 一重には「もし存在したら、自分が使ってみたいサービス」を思いついたことですね。1人のコレクターとして現在の事業のようなサービスがあったらいいなと感じたんです。だから最初はごくごく個人的な思いつきです。 というのは、実際に私もコレクションの保管や管理に悩んでいたから。日本の美術業界を「作品を購入する側」、言い換えると「作品を保有している側」から見ると、少し痒いところに手が届かないというか、実は足りない部分って意外と多いんじゃないかなと感じていたんですね。 何となく想像はつきますが、保管場所についてですか? そう、どのコレクターにも共通する悩みです。コレクターの性と言いますか、やはり作品をたくさん買うし、たくさん保有するわけです。当然ながら家の壁は埋まっていく。やがて「飾る場所がない」という問題に突き当たる。 私自身もそうだったし、だから当時は倉庫も検討したんですが、でも少し高価な印象があった。いわゆるビックコレクターには妥当な価格かもしれませんが、サラリーマンコレクターのようなクラスにいる自分には合わなかったんです。 それでも作品は欲しい。 まさしく(笑)。 これはとあるコレクターの方から聞いた話ですが、その方曰く「何を持っているか分からなくなってこそコレクターだ」と(笑)。 それは極端な話だと思いますが、でも自分を例に考えると、やはりインテリアのように飾ることを想定して買っていないことは事実なんですね。「欲しい」と思ったら買う。そこには実用的な目的意識はない。家の壁に合うとか、他の家具に合うとかではなく、自分がその作品に納得し、欲しいと思ったら買う。だからある意味では家の中に置く場所がなくて当然だと思うんです。 作品は展示に貸出をしたりするので、中には家にある方が稀という作品もありますよね。 でも一方で危険だなと思うのは「あれ、あの作品って持ってたっけ?」となること。つまり自分のコレクションの把握が不可能になってしまうことは危ないと思っていて、それは作家さんへのリスペクトという点でもそうですが、その後の購入やコレクションの形成にも支障をきたしかねない。 「飾る場所がないこと」と「コレクションを把握してないこと」は別問題ということですね。 おっしゃる通りです。現実にたくさんの作品を保有するコレクターはいて、しかも作品を買い続けている。でもコレクションの数が多くなればなるほど、その把握は困難になる。 極端な話ですが、その究極系がコレクションの散逸ですね。 そう、でもせっかく形成したコレクションがそんなことになってしまうのは勿体ないというか、悲しいことだと思うんです。文化的な損失はもちろんですが、アーティストにとっても悲しむべきことだし、コレクターにとっても資産が失われることを意味してますから、誰にとっても歓迎すべきことではないですよね。 私自身もその問題に直面しかねなかったし、そう考えると危ういな、と。だから最初は「あったらいいな」なんです。自分のコレクションを適切に管理してくれるサービスがあったら良いな、と。自分も使ってみたいという、その気持ちが今の事業を始めたきっかけですね。 「不動産は管理会社があるのに、アートにはない」 先ほどのお話だと、between the artsさんの事業は作品を預かるだけではなく、「コレクションの把握を手伝う」ような、ある意味では資産管理に近いニュアンスを感じますね。 いや、まさしくそこが重要なポイントです。私たちがしたいことは「作品を預かって保管する」だけではない。その先にあるコレクションの管理を見ているし、そここそが今の日本のアート業界にとってまだまだ不足している部分だと思ってます。 作品を預けることと、作品を管理することにはどういう違いがあると思いますか? ここのニュアンスは複雑です。倉庫を借りて作品を預ける、これはほとんどお客様だけで完結してることだと思うんですが、でも「コレクションの把握」は満たされていない。結局は自己管理の話ですから。 作品の保管だけではなくて、本当に必要なのは「自分が何を持っているのか?また、それらの価値はいまどうなっているのか?」を知ることだし、作品を持ち続けるということには色々なイベントも伴う。その全体をカバーしてくれるサービスやプレイヤーが日本には欠けていると思うんですね。 倉庫での保管の様子 細やかな発想だと思いますが、着想源はどこにあるんですか? 不動産の管理会社ですね。 もともと私がその業界にいたことが大きいのですが、不動産にはアセットマネジメントという考え方があり、保有している不動産を管理する仕組みが出来ているんですね。 不動産もアートも高単価ですよね。でもなぜか後者には資産管理という観点が欠けている。正直に言うと、アートは全体的に不動産よりも管理体制が雑な印象が否めなかった。事業として本腰を入れてやろうと思ったきっかけの一つはそこですね。 不動産とアートで似通っている部分もあれば、その反対もあると思いますけど、戸惑うことはありますか? 大きい違いとしては法律でしょうね。不動産は法整備がされていて、そちらを主なルールにして事業展開すれば大きな間違いは犯さない。けれどアートにはそれがない。でも全くルールがないわけではなく、諸先輩方が培ってきた不文律の決まりはある。事業として展開していくにあたってはいわゆる業界の掟のようなものには気を遣いますね。 例えばアートの仕事を始めようと思った時、アーティストが所属するコマーシャルギャラリーの方向には行かないようにしようとは考えていました。もともとは「アートもちゃんと管理した方がいいよね」という、1人のコレクターとして思ったことを実現したいだけなんです。 業界のポジショニングには気を遣われているんですね。 ポジショニングというか、単に「もっとアートの世界をよくしたいよね」と思っているだけです(笑)。 課題が多い領域ですし、競合しあうのではなく、手を繋ぎあう方が優先されるべきだと思うんですね。 だから、基本的には全てのプレイヤーにとってパートナーになりたい。現実問題、これがすごく難しい発想だというのは分かります。でもコレクションの管理にはまだプレイヤーがいないし、そう競合し合うこともない。ギャラリーからお客様へのサービス提案のひとつにうちが入れたら嬉しいし、みんな困ってる領域ですから。 これも理想ですが、私たちが関わることで作品のバリュエーションが上がってくれれば良いと考えています。それは資産的な意味だけではなく、文化的な側面でもそうですね。 具体的にはどういう意味でしょうか? データをおさえることですね。個々の美術品にはそれを制作した作家さん、タイトルやサイズ、どこで買ったのかなど、様々な情報がある。作品の情報だけではなく、その来歴も重要な情報です。作品をお預かりすれば、例えば美術館への貸し出しなど出入りはある。その情報をしっかり管理する必要はあると思います。 自分のコレクションの把握や管理ができない状態を回避するには、そのデータを適切に管理することが必須になってくるでしょうからね。 他にもコレクションを展示するスペースもオープンされましたね。日本でもコレクターがオープンな姿勢をとることが増えた昨今のニーズをおさえている印象があります。 「自分のコレクションを見せる」という願望はあると思うんです。私自身がそうだし(笑)。なぜなら良いと思って買っている作品だし、それを同じ価値観を持っている人たちに共有したいというのは自然な気持ちだと思います。 港区元麻布にオープンさせたレンタルアートギャラリー「between the arts gallery」では、特定のコレクターにクローズアップしたコレクション展などを定期開催しています。自宅や倉庫に作品を眠らせておくよりもずっと健全な楽しみ方だと考えていますね。 レンタルアートギャラリー「between the arts gallery」 それも一つのコレクション管理のあり方ですね。 おっしゃる通り、自分が持っている作品をどのように管理するか、そこには展示のような動きを与えることも選択肢にある。そういった幅広いコレクション管理のあり方も提案していきたいと思っています。 重要なのはあくまでも美術品、アート作品を扱っているということ。不動産やその他の資産と同様の部分はあっても、アートの特質はおさえなくてはいけない。 日本のアート業界には色々なところに、色々な課題はあると思います。一つの会社が全部を解決することは難しいですが、私たちが取り組むのはあくまでも「コレクション」という領域にある問題。アートはインテリアとは違います。適切な管理は絶対に必要だと信じています。 大城崇聡 | Takatoshi Ogi 株式会社between the arts CEO/Founder 一般社団法人日本アートテック協会 代表理事 不動産テックカンパニーの創業に携わり、東証1部上場を経験。クラウドファンディング事業やトラベルテック事業などの新規事業の立ち上げや事業拡大を牽引。2020年1月、株式会社between the artsを起業。自身のアートコレクターとしての実体験を元に、アート作品の管理、保管、流動性に関する問題点を解決するため、日本初のアート管理サブスクリプションサービス「美術倉庫」を展開。歴史の長いアート・美術業界にテクノロジーをもたらし、日本のアート市場拡大への貢献を目指す。

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“現代アートの歴史を辿る” 広重からゴッホの作品等1億画素の高精細画素による複製画の特集

この度、TRiCERAは大日本印刷株式会社による高精細印刷技術を活用した「プリモアート」の販売を開始致します。今回は精密な複製技術により制作した葛飾北斎、歌川広重、クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、フィンセント・ファン・ゴッホ、ヴァシリー・カンディンスキー、ピート・モンドリアン、グスタフ・クリムトの作品を販売します。 1億画素の高精細撮影による高い再現性 プリモアートとは、DNPが長年に渡って培った技術を用いた、高精細印刷技術。高解像度でデータを処理し、原画に限りなく近い色調やタッチを忠実に再現し、画材紙・キャンバス ・和紙・バックライトフィルムなど多様な用紙へ印刷することが可能です。 通常の印刷では4色のインキ(CMYK)を使用しますが、プリモアートは10色のインキによって再現可能な色域が通常よりも広いことが特徴の一つ。 作品の撮影には、1億画素超の高精細デジタルカメラ「PHASE ONE」を使用し、作品の色調や筆致、キャンバスや紙の目まで忠実に読み取り、原画に近い再現性を出すことが可能となっています。 広重からゴッホまで-今回の特集作家たち- | 葛飾北斎(1760〜1840 / 日本) 江戸時代に活躍した浮世絵師の一人。「北斎漫画」などの作品を残し、ゴッホなど西洋美術にも大きな影響を与えた。 【作品詳細】作家名:葛飾北斎作品タイトル:冨嶽三十六景_神奈川沖浪裏作品サイズ:29.7×42㎝ 作品価格:30,000円(税抜)オリジナル額:20,000(税抜) 購入を検討するクリック 【作品詳細】作家名:葛飾北斎作品タイトル:冨嶽三十六景_凱風快晴作品サイズ:29.7×42㎝ 作品価格:30,000円(税抜)オリジナル額:20,000(税抜) 購入を検討するクリック | 歌川広重(1797〜1858 / 日本) 江戸時代に活躍した浮世絵師の一人。風景をメインにした作品は「ヒロシゲブルー」など色使いに特徴があり、ゴッホやモネなど西洋美術にも影響を与え、「ジャポニズム(西洋における日本文化の流行)」のきっかけともなった。 【作品詳細】作家名:歌川広重作品タイトル:名所江戸百景_亀戸梅屋舗作品サイズ:42×29.7㎝ 作品価格:30,000円(税抜)オリジナル額:20,000(税抜) 購入を検討するクリック | クロード・モネ(1840〜1926 / フランス) 印象派を代表する画家の一人。「印象派」のネーミングの元となった作品を手掛けた画家でもある。 【作品詳細】作家名:クロード・モネ作品タイトル:オランダのチューリップ畑作品サイズ:42×59.4㎝ 作品価格:40,000円(税抜)オリジナル額:20,000(税抜) 購入を検討するクリック | ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841〜1919 / フランス) ポスト印象派を代表するフランスの画家。女性の美しさを追求したことでも知られ、印象派の中ではリーダー的な役割も果たした。 【作品詳細】作家名:ピエール=オーギュスト・ルノワール作品タイトル:ピアノを弾く娘たち作品サイズ:59.4×42㎝ 作品価格:40,000円(税抜)オリジナル額:20,000(税抜) 購入を検討するクリック | フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890 / オランダ) オランダにおけるポスト印象派を代表する画家。感情を率直に、大胆に表現した色使いに特徴がある。弟の尽力によって死後に高く評価され、中には100億円を超える作品もある。 【作品詳細】作家名:フィンセント・ファン・ゴッホ作品タイトル:星降る夜、アルル作品サイズ:42×59.4㎝ 作品価格:40,000円(税抜)オリジナル額:20,000(税抜) 購入を検討するクリック | ヴァシリー・カンディンスキー(1866〜1944 / ロシア) 抽象絵画の先駆者の一人として知られる画家。「熱い抽象」とされる作風が特徴的で、晩年は不遇に過ごしたが、その死後になって評価が高まった。 【作品詳細】作家名:ヴァシリー・カンディンスキー作品タイトル:黄・赤・青 作品サイズ:59.4×42㎝ 作品価格:40,000円(税抜)額装:20,000(税抜き) 購入を検討するクリック | ピート・モンドリアン(1872〜1944 /...

クリップしておくべき展覧会:Rina Mizuno.

Photography by MIYAJIMA Kei About Mizuma Art Gallery 1994年にSueo Mizumaによって東京に設立され、流行にとらわれない独自の視点で、日本とその周辺地域のアーティストをグローバルな舞台で紹介してきました。 よりグローバルな視点でアーティストを紹介するため、2012年にシンガポールにスペースを開設し、インドネシアやニューヨークにもスペースを持ち、アートバーゼルや国際見本市への出展も意欲的に行っている。 MIZUNO Rina, A Tile Flower, 2019, Oil on canvas, 53 × 53...

C-DEPOT: 日本現代美術ユニット

C-DEPOTは、70~80年代前後に生まれた同世代の日本の若手アーティストによって結成されたアーティストグループです。絵画、立体作品、メディア、映像、音楽など様々なジャンルの作品を制作しています。グループの拡大を目指して、他の才能ある若手アーティストを発掘し続けています。C-DEPOTの発起人の一人である金丸雄二氏は、グループを立ち上げるまでの経験をこう語る。過去17年間、彼はグループの運営に携わり、活動を続けてきました。彼は挑戦、成功、様々なプロジェクト、そしてC-DEPOTの将来について話してくれました。 Contents C-DEPOT の起動 C-DEPOTのメンバー 展示会の経験 方向性の変更 グループの概念 未来を見据える C-DEPOTの起動 Q: C-DEPOTを始めた時に、他にも身近なアーティストグループはありましたか? A:アーティストグループで活動している人は何人か見かけましたが、C-DEPOTのような大規模なグループは昔からなかったと思います。C-DEPOTみたいなグループがあったら入ってたかもしれないけど...。 Q:自分のグループはどのくらい成功したと思いますか? A: 2002年はちょうどインターネットが普及し始めた頃で、私はこれを新しいチャンスだと思っていました。しかし、いざインターネットを使った新しい動きを始めようとすると、技術的な問題が出てきて、なかなか実行に移すことができませんでした。そこで、展示会をメインにしようと考えました。 Q:C-DEPOTは最初の5年間でどのように変化しましたか? A:2012年までは、横浜赤レンガ倉庫と表参道のスパイラルで毎年交互に展覧会を開催していました。2012年はグループを立ち上げて10年目だったのですが、このまま年に一度の展覧会を続けても、これ以上の機会があるとは思えなかったので、一旦終了することにしました。前回の展覧会は、同時期に両会場で開催されました。この間に人数を増やして、両会場を予約し、最後に花火を打ち上げました。その後、企業との距離を縮め、コラボレーションする方向にシフトしていきました。自分たちの好きなように展示会を開催するのではなく、依頼を受けるようになりました。そうやって依頼をしていくうちに、企業からの支援も増えていきました。しかし、企業からの経済的な支援はあっても、展示会の費用を賄うには十分ではありませんでした。最終的には、展覧会の費用は作家が負担することになりました。できれば、アーティストが経費を負担しなくてもいいような素敵な会場でショーをしたいと思っています。 C-DEPOTのメンバー Q:様々なジャンルのアーティストを招聘しているのが面白いですね。 A:そうですね。私は東京芸大のデザイン科で学んでいました。このデザイン学科は、統一された学科ではなく、ミニ大学のような感じで、よくミニ芸大と呼ばれていました。大学には様々な学科があるのが一般的ですが、東京芸大のデザイン学科は、様々なメディアで活躍する学生がいることで、揶揄されていました。デザイン学科はデザイン学科ではないという意見もありました。高校生の時に芸大の卒業制作展を見て、この学科が一番面白いと思って勉強したいと思ったんです。いろんなジャンルのアーティストが集まったグループ「C-DEPOT」の構想は、この学科がいろんな媒体を受け入れてくれたことがきっかけだったと思います。 Q: グループ内でメンバーはどのように影響を与え合っているのですか? A: グループで仕事をすると、競争意識が生まれます。例えば、メンバーは他のメンバーが次に何を作っているかを気にして、自分の作品よりも大きな作品を作りたいと思っているかもしれません。このような競争心は、モチベーションを高め、相乗効果を生み出し、メンバーが作品を作り続けようとするきっかけになります。また、他のアーティストとのつながりを感じ、新しい作品を共同制作することもあります。良い意味でお互いに影響し合っていると思います。 Q: グループを運営していく上で苦労したことは何ですか? A: 少人数で大きなイベントをやるのは大変なことだと思います。でも、グループを継続させることも大変だと思います。グループを継続させながら、単調にならないように、マンネリ化しないように気をつけなければなりません。年を重ねるごとにメンバーの考えやアイデアが変わっていくこともありますし、難しいこともあります。時間が経つことで芸術的な技術が成熟していく一方で、衰えていく部分もあります。長年グループを続けていくことの難しさを経験してきたような気がします。C-DEPOTを始めてから15年が経ちましたが、どうすればモチベーションを維持できるか、メンバーがリフレッシュして活動できる環境を作るためにはどうすればいいか、ということを常に考えています。 Q: C-DEPOTに参加するアーティストの魅力は何ですか? A:メンバーそれぞれがそれぞれの芸術の形を持っていて、その中で技術を磨いているのですが、一つの芸術の形だけに集中してしまうと、アーティストの視野が非常に狭くなってしまいます。そんな時に、他のジャンルのアートを見たり、違う考え方をしたり、他の美に感動したりすることで、自分や作品を客観的に見ることができるようになります。こういう考え方もあるんだ」とか「こういうのも美しいと思うんだ」とか、そういうことに気づくことができます。価値観が違っていても、言葉が違っていても、アーティストだからこそ理解できる。根本的なところで他のアーティストとつながることができるのが楽しいですね。 展示会での経験 Q: 2012年までに、どのような観客が来場したのでしょうか? A: 人が多く訪れる人気のある2つの会場を選びました。もちろん自分たちの展覧会は自分たちで宣伝したのですが、横浜赤レンガ倉庫もスパイラルもどちらにしても人が来る場所です。特にスパイラルはカフェも併設しているアートコンプレックスなので、新しい動きやトレンドを意識している人が見てくれたのだと思います。また、アート雑誌にも広告を出していたので、アート関係者にもアピールできました。また、グループのメンバーが個人的に知人にメールを送ったりもしていました。   Q: 展示会の印象的だった点を教えてください。 A: プロジェクトのオファーを受けたり、インタビューを受けたり、テレビで取り上げられたりしました。 このような小さなことが起こり、今になって振り返ってみると、私たちの展示会がネットワーク化され、グループのことを広めてくれていたことがわかります。下地としての活動があったからこそ、信頼され、現在では受託の機会を与えてくれています。 方向転換 Q: 2012年以降はどうですか? A: 私たちの作品を販売したいと思っていたので、値札をつけて展示することを発表して、購入を促進したいと思っていました。それに伴い、アーティストを中心としたアートフェアができたらいいなと思っています。デザインフェスタやGEISAIのような規模のアートフェアを想定していたのですが、なかなか実現できませんでした。その代わりに、2014年には渋谷西武百貨店の8階で大規模な展覧会を開催しました。2012年以降、これまでの取り組みがまとまってきて、渋谷西武百貨店のような大企業とコラボして展覧会を開催するようになって、ようやく結果が見えてきました。 それからは、いろいろな依頼を受けるようになりました。例えば、羽田空港に直結するロイヤルパークホテルができた際には、各部屋のアートデコレーションをC-DEPOTに依頼しました。スイートルームのアートデコレーションとロビーの大きな絵画をC-DEPOTのメンバーが協力して制作しました。ロビーの絵は永久にそこにあり、今でも見ることができます。ホテルの性質と制約の多さは、私たちにとって大きな学びの場となりました。 一方で、汐留のパークホテル東京という別の会社と一緒にやっていたときは、自分たちのやりたいことの自由度が高くて、1年に4回、それぞれ2週間から3週間の展覧会をやりました。1年間で4回、それぞれ2~3週間の展示会を行いました。ホテルのテーマが「日本の美」ということで、日本の四季をテーマにした展示を行いました。 また、2011年には六本木のカフェ「RANDY」の内装を1年かけて制作しました。2ヶ月ごとにテーマを変えて作品を変えたり、アーティストの個展をやったりしていました。自由度が高く、作品には値札をつけて展示して購入してもらいました。カフェのお客さんが「次は何を展示するんだろう」と興味を持ってくれるようになったのが面白かったですね。残念ながら、このカフェは2018年に閉店してしまいました。 2013年より、豊島区に人を呼び込むことを目的に、駅西口で開催されているアートイベント「新池袋モンパルナス西口展」に参加しています。池袋モンパルナスと呼ばれるこのエリアには、C-DEPOTのオフィスがあります。大正時代末期から終戦時には、画家の熊谷守一や小説家の江戸川乱歩などの若手作家が集まり、芸術活動を行っていました。この文化的な歴史をアートで浮き彫りにしようというのがこのイベントです。このイベントは13年続いており、C-DEPOTが関わって特別企画を行っています。 例えば、ある展覧会ではこけしがテーマになっていました。宮城県のこけし職人の弥次郎さんが木でこけしを作り、作家が絵を描くというもので、宮城県と豊島区の交流を深めるためのものでした。宮城県と豊島市の交流を深めるためのもので、こけしの売り上げの収益は東日本大震災の復興支援に寄付されました。また、市内各所に様々なアート作品を設置しました。 街中の公園や消防署、証券会社の窓にアートフラッグを設置しています。 その他にも、会社のオフィスのアート装飾など、様々な仕事の依頼を受けています。これらの活動で利益を上げているわけではありませんが、私たちを取り巻く状況は変わってきていると感じています。企業がアートを必要としている、最近では企業がビジネスやイベントの差別化のためにアートを求めるようになってきていて、これはとても良いことだと思います。お客様は、「私たちはいろいろなアート作品を作れるし、何かお役に立てるのではないか」という期待を持って、C-DEPOTに問い合わせてきてくれます。徐々に知名度が上がってきたこともあり、プロジェクトの合間を縫って休むことなく依頼を受けるようになりました。海外で作品を発表する方法を常に検討してきましたので、今回のTRiCERAに参加させていただいたことに感謝しています。 最初の5年間はグループを立ち上げたばかりで、社会的に認知されていなかったので、いろいろなリスクを冒して、いろいろな実験をしました。今では30代、40代になったメンバーもたくさんいます。これまでの努力が実を結び、アーティスト一人一人が、そしてグループ全体が本当に成長してきたと思います。もちろん今でも問題はありますが、経験を積んでいるからこそ、トラブルを回避したり、問題を解決したりすることができるのだと思います。 グループのコンセプト Q:「地域に密着したアーティスト集団」というコンセプトは変わりましたか? A:いいえ、コンセプトは変わっていません。むしろ、コンセプトは現実のものになりつつあると思います。ただ、「もっと欲しい」という課題はあります。メンバーはもっと良いステージを望んでいたり、もっと良い結果を見たいと思っているので、次のステップをどうしたらいいのかを常に考えています。 Q:「地域に密着したアーティスト集団」とは、街中でアートを実施したり、アートイベントを開催したりすることですか? A:日常生活のいたるところにアートがあることを目指すことが大切だと思います。日常的に行くところにアートがあったらいいなと思います。また、私たちはアーティストの集まりなので、どうすればアーティストが継続的に作品を作れる環境を作れるかを常に考えていて、それを実現できるように努力しています。   私のような絵描きの場合は、先人が道を切り開いてくれたからこそ、プロの絵描きになって生計を立て、自分の道を切り開いていくことができているわけです。しかし、メディアアートや立体美術などの新しいジャンルの作品を制作しているアーティストにとっては話は別で、そもそもアーティストの作品は売るものではなく、体験するものです。だからこそ、アーティストが継続的に作品を作り続けて生計を立てられるような機会を作っていきたいと思っています。それがとても大切なことだと思っていますし、C-DEPOTがそのような機会が生まれる場所になるようにしたいと思っています。 そのため、作品の売上を上げることに力を入れているのはもちろんですが、アートを提供するということは、パフォーマンスを提供したり、様々なイベントにアートを提供したりと、様々な形で提供できると思っています。そのため、アーティストの得意分野に合わせた様々な企画を企画して、地域との絆を作っていきたいと思っています。 最近は、子供向けのワークショップでも、ワークショップをしてほしいという要望が多くなってきました。子供に文化教育を体験させたいという親御さんが増えているように感じます。 妻でさえ、子供たちを連れて行くために、こういったワークショップを探しています。従来の絵画教室に通うというよりも、ユニークなジャンルのアートに魅了されているようです。 C-DEPOTでは豊島区と連携し、毎年夏休みに5日間のワークショップを開催しています。子供たちへの美術教育はとても大切なことだと思うので、そのために何か貢献できないかと考え始めました。私たちのワークショップはとても人気があり、広告を出さなくても多くの人が申し込みをしてくれます。このようなワークショップの需要は非常に高いことがわかりました。 未来を見つめる Q:今後のビジョンを教えてください。 A: C-DEPOTはウィーン・セセッシオンをモデルにしています。ウィーン・セセッシオンには「セセッシオンビル」という建物があり、そこで展覧会を開催していました。メンバーが集まっていろいろな活動ができるような大きなアートセンターができたらいいなと思っています。 Q:TRiCERAに期待することは何ですか? A: 質の高いアートを提供したいと思っていますし、結果が出れば、もっと積極的に活動してくれるメンバーが増えると思います。多くのメンバーがいる中で、継続的に活動している人は半分くらいです。実績があっても今は活動していない人たちにも参加してもらい、自分が得をしていると感じてもらえればいいと思います。そのためにも、海外に向けての活動は非常に魅力的だと思います。 もっと見るC-DEPOTの芸術 (A-Z) Aran...

毒と浄化の物語 – 城蛍インタビュー –

城蛍は1996年愛知県出身。2019年に上京して作家活動を開始。今年3月には山下舞子キュレーションによって銀座のGallery Camelliaで初個展を開催した。曰く「瞬間的な物語を切り取る」というスタンスにおいてペインティングされたキャンバス、それから本人曰く「彫刻」と呼称する自作した額縁によって構成される作品を制作する彼女に、今回は作品と制作を中心に、その活動について話を聞いた。 作品の外形的なところから伺いたいのですが、城さんの作品は絵画と額縁に分かれているものとそうでないものがあります。ご自身では額縁の部分を「彫刻」と呼び、装飾物としての額縁と分けておられます。尋ねたいのは、城さんの作品において、この木枠の部分がどういうポジションにあるのかという点です。 一般的に額縁は装飾物の意味合いが強い。絵の飾りという立ち位置。私としては絵画と枠と、別個の存在をつくっている意識はないんですよね。絵を描いて、お手製の額をつけているわけではない。額縁として設定してしまうと、どうしても絵の飾りという聞こえ方になってしまうけれど、でも絵のためにあるわけではない。どちらかが主役で、どちらかが脇役ということはない。 いわゆる平面と立体という区分がし難い作品だと思いますが、その自覚はありますか? 平面かどうかについて言えば、限定してはいないと思う。このかたちの最初期の作品に〈老人と海Ⅲ〉というのがあるのですけど、それはストーリーの瞬間を切り取るというつくり方をして、その瞬間の保存という意味を込めて枠を使いました。そもそも、額縁は大切な写真とか記憶の保存に使うものだから。でも木枠の部分は絵の飾りではないから、平面というか、絵の部分がメインという考え方はしていない。かと言って立体でもないですけれど。だからどっちでもないし、分けるのは難しい。その必要もないと思う。 例えばリチャード・タトルや、あるいは最近の日本では安井鷹之助さんなど、平面と立体のボーダーラインに立とうとする作家さんがいます。城さんにもその意識はありますか? いえ、特に意識はしていなかったです。最初の最初で言えば、キャンバスの四角さが嫌だった。決まった形であることに嫌気が差したんですよ。そもそも絵だけだと角があったり、横があったり、紙だったら紙の厚みがあったりするけど、そういうのが気になるんです。すごく気になる。キャンバスの横に釘を打つなら、絶対にそれは隠したい。邪魔に見えて仕様が無い。そういう考えの人なんですけど、まだ東京に来ていない時、制作をしていてキャンバスの形がすごく気になった。居心地が悪かったんだと思います。それで外側にはみ出そうと思って、キャンバスの四角形から。最初は勢いというか、何か「やっちゃえ」みたいな。 「はみ出す」ための手段として額にたどり着いた。偶発的なことでしたか? いや、論理はあった。だから...偶然とは少し違うと思います。そうすればもっと広がりがあると思っていたから。 キャンバスを形態に手を加える表現方法としてはキャンバスを破いたり切ったり、燃やしたりと色々な先行例があります。中でも絵の外周に進んだ点が興味深いです。 絵の表面に暴力的なことはしたくなかったんですよ。傷をつけるのは嫌だった。 「キャンバスの外」を意識して制作された最初の作品は何でしょうか。 意識の話で言えば〈老人と海Ⅲ〉かな。あれは色々なことがはっきりした作品。でもそこで方向性が生まれたわけではなくて、それ以前にも(木枠を使う作品は)あるにはあったんです。だから...発見に近いのかな。それまでは自分でも気付いていなかった、無意識に続けていたことが自分の中で「そういうことだったのか」と思えた。今はそのやり方を整えている感じです。 例えば〈鯨と波〉は額縁がない円形の作品です。先ほど「ストーリーを切り取るつくり方」と仰っていましたが、つまり最初に作品化したいストーリーの瞬間やモチーフがあって、その実践プロセスで絵画と額縁への分化が必要な場合、そうでない場合があるということですか? そうです、その通りです。だから(額縁を使うかどうかは)場合によりけり。使っている場合にはやはり必然だと思う。だけど、そうじゃない作品もある。無いと成立しないという話ではなくて、必要な場合に採用するやり方。〈鯨と波〉では登場する必然がなかったし、逆にというか、支持体が丸くなる方に進んだ。それが作品にとっては一番自然だったから。無くても完結はするんですよ。枠があるのは、それが作品にとって自然な形だからに過ぎない。 つまり額縁は、あくまで表現の延長線上にあるんですね。ストーリーがあって、絵があって、場合によっては額縁があり変形な支持体がある。 そう、だからとにかく、私としては別々に捉える理由がない。どちらも一つの表現でつながっているから。それに枠があっても無くてもやっていることは同じ。〈鯨と波〉もそうですけど、例えば人の手によって違う姿になった生き物とか、それが生きていた風景とか場所とかを描いている作品もある。そういう作品には枠という形であるべきなのかなって。だから、それぞれですね。 形態から中身に話を移しますが、先ほどのストーリーというのは、映画や小説のように時間軸があるのですか。時間の流れが先か、映像が先かの話ですが。 モチーフが先ですね。描きたい対象があって、その周りにはどういう人がいるのか、それに関わる人物や場所が出てくる。その対象を軸に、それを見た人が目にした景色とか思い出している光景とか、その人たちの脳みその中を考える。結果的にはストーリーとか時間を切り取ってることになりますけど、でもモチーフが先。瞬間的な物語性というか。出てくる人たちの10秒とか10分とか、そういう瞬間的なストーリーです。一生分は考えていない。 登場人物の記憶にフォーカスしているように聞こえますね。 人には限りませんけど、記憶というのはそうかもしれない。だから登場する生き物の見た景色とか出会った人、昔した会話の内容、過去に存在していた場所について考えるのかもしれない。そもそもの最初に額縁を使った時も思い出や記憶に纏わっている。 記憶に焦点を置いているとして、モチーフの出所はどうですか。全くの空想か、それとも身の回りから取材しますか? モチーフが向こうから出て来る感覚に近いのですけど、どうだろう、でもメモはしています。生活する中で目に入ったもの、気になったものを書き留めておく。「あ、これ描きたいな」と思ったものをメモする。断片を集めたりしていて、その中で特に癖のある事柄があるんですけれど、例えば車のヘッドライトとか土偶とか、基本的にそれが作品のメインのモチーフとして出てきたりします。 物語の形式でも、例えば小説には一人称・二人称・三人称とありますが、城さんが制作する際の視点はどうでしょうか。 モチーフの視点かもしれない。だから三人称が近いと思います。自分の思ったことも入るけれど、でも一番近いのはモチーフ。モチーフや第三者が思ったこと、天候とか湿度も割と考えたりします。モチーフとなる存在がどういう場所にいるのか、いたのか、その周りの環境はどうなのかって。例えば土偶をモチーフにした作品なら、そもそも土偶を作った昔の人とか、長い時間をそれと一緒に過ごした持ち主のこととか。その場にいる存在の全てを考える。 メモの話で「描きたいと思うもの」を書き留めると話していましたが、そこに共通点はありますか。というのは、作品には暗色の画材が登場しません。選ばれるモチーフや画材は、目指している世界観と関わりがありますか。 基本的には描きたいものを描いていますけど、確かに共通点はある。暗いとか少し怖いとか、謎っぽいとか、毒があるとか気持ちが悪いとか。明るい部分もありますけど。でも作品にすることでそれを浄化している感覚が近いかもしれない。今は黒を使わないんですけど、それは多分バランスが悪いから。使うと、暗く描かれてしまう。それは少し違うと思うんですよ。暗さが根っこにあっても明るさはあっていい。きれいにしたい気持ちが強いのかもしれない。 負の浄化。 そうですね、それは近い。根本的には自分のだし、表層的には他人にとっての。作品を制作することそのものというか、その瞬間を残しておくことが浄化なのかな。自分であれ他人であれ、作品として、自分のフィルター越しに投影することで浄化になるのかなと。だから白い色を使うんですよ。その方が落ち着けるじゃないですか。 少しバッググラウンドに話を伸ばしたいのですが、例えば城さんが記憶に留めている作家もそういった世界観が多いですか。 どうだろう。シーレ、ボナール、デュマス、ペイトン、ワイエス、あとは村瀬恭子さんとクリス・ヒュン・シンカン、ハマスホイとか無限にいますけど、近さはどうだろう。好きだけど、でも違うと思う。私が描くべき作品でないことが多いと思います。でもハマスホイは、そうですね、違和感があるから......。予備校の先生が「ハマスホイの魅力は違和感」と仰っていて、制作でも、何か足りないと思った時にはその言葉を思い出しています。 コンテンポラリーのペインターが多いですが、元から現代アートに関心が高かった? というわけでも無くて、高校の時に油絵を専攻していたんですけど、そこで学んでいたのはいわゆる伝統的な油彩画だった。いかに描くか的な、技術的な話が多い学校だった。むしろ浪人している時ですね。今の作品がどういう風に成立しているか勉強していたら好きになりました。 少し話がそれますが、城さんは愛知から東京に出てこられて活動をスタートさせましたね。今年で2年目だと思いますが、そもそも上京したきっかけは? 単純にモチベーションの話ですね。私は美大に通っていないのですけど、2年浪人をして、でも細々と制作は続けようと。予備校を辞めてアルバイトしながら暮らしてたんですけど、その間、正直絵はほとんど描いていなかった。......年に2、3枚くらいだったかな。働いて、帰って、疲れたって、本当にその繰り返しだったんですよ。そういう時期にたまたま画家のやましたあつこさんから声をかけて頂いたんです。「続けるなら東京の方がいい。東京においで」って。それは正解だったと思う。環境が全然違うし、入ってくる情報がまるで違うから。 ある部分において、現代アートは戦略的な世界です。城さんは東京に出て来られて、その2年目に最初の個展を開催された。そしてキュレーションは山内舞子さん。非常に好調なスタートですが、自分のポジショニングは考えますか。 ポジションとかは、どうだろう、あまり考えてないです。まだはっきりとはしてないだけかもしれないですけど。でも私の好きな作品があって、それは見る場合もそうですけど、作家が心の底から楽しんでいる作品が良いと思う。そういう作品をつくっていきたい。あとは作品のことだけですね、考えるのは。でも制作は気持ちの面が大きく影響するから、この先どうなるかは分からないですよね。 作品はより変化をしていきますか。例えば、全く額縁を使わなくなるとか。あるかもしれないし、ないかもしれない。そもそも私自身ペインターという自覚もないんですよ。だから作品を絵画に限定するつもりもない。でも、だからと言って彫刻家でもない。今後は(キャンバスと額縁を分けずに)同じ支持体とか、キャンバスの厚みを増していくとか、制作の方向も色々と考えていますけれど、でも絵を描いている部分があることとか、絵を描くこと自体を止めるつもりはないです。......絵は描いていると思う。でもどういうやり方でやっているのか、それは自分でも分からないです。今のところは。 TRiCERAのページはこちらから

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